【目的】妊娠期あるいはその少し前に、母体が職業上、極低周波磁界(ELF-MF)にばく露されることが、小児脳腫瘍の発生率にどう寄与しているかを調べること。【方法】カナダの州(ケベックおよびオンタリオ)における1980年から2002年までのケースの中から、総数、548件の発病ケースと 760件の健康な対照群を募り、その子らの母親から聞き取り調査をした。職業上の ELF-MF ばく露量は、個人ばく露評価表や職業ばく露マトリックスを用い、マイクロテスラ単位で見積もられた。ばく露量を分析するために3つの評価指標を用いた: 累積、平均、到達最大値レベルである。【結果】妊娠前に計測された平均ばく露指標を用いた所、星状細胞腫瘍への増大したリスクが認められた(OR = 1.5, 95% CI = 1.0 - 2.4)。妊娠全期間に渡り、星状細胞腫瘍および全ての小児脳腫瘍への著しく増大したリスクが、平均指標のもとで認められた(それぞれ、OR = 1.6, 95% CI = 1.1 - 2.5 ; OR = 1.5, 95% CI = 1.1 - 2.2 )。職名に着目をすると、星状細胞腫瘍(OR = 2.3, 95% CI = 0.8 - 6.3 )と全ての小児脳腫瘍(OR = 2.3, 95% CI = 1.0 - 5.4 )への2倍の増大リスクが、縫製ミシン操作手の間に認められた。【結論】研究結果は、母体が職業上 ELF-MFにばく露されることと、生まれてくる子供のある種の脳腫瘍との間に関連性がある可能性を示唆している。
グループ | 説明 |
---|---|
集団 1 | 電気作業員 |
集団 2 | ミシン作業員 |
集団 3 | 事務機作業員 |
集団 4 | 飲食品作業員 |
集団 5 | 放送・娯楽産業 |
集団 6 | 妊娠前の2年間の累積ばく露: ≥ 214.8 µT‐日 |
集団 7 | 妊娠前の2年間の平均ばく露: ≥ 0.30 µT |
集団 8 | 妊娠前の2年間のピークばく露: ≥ 0.4 µT |
集団 9 | 妊娠中の累積ばく露: ≥ 73.6 µT‐日 |
集団 10 | 妊娠中の平均ばく露: ≥ 0.28 µT |
集団 11 | 妊娠中のピークばく露: ≥ 0.4 µT |
症例 | 対照 | |
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参加者 | 760 | 548 |
アストログリア腫瘍の症例239人、未分化神経外胚葉性腫瘍の症例145人、その他の神経膠腫の症例81人
ミシン作業員として雇用されていた母親の子どもには、脳腫瘍の全てのタイプについてリスク上昇が認められた。妊娠前の平均ばく露が ≥ 0.30 µTで、アストログリア腫瘍についてのリスク上昇が認められた。妊娠期間中については、磁界ばく露の平均が ≥ 0.26 µTで、アストログリア腫瘍及び小児脳腫瘍についての有意なリスク上昇が認められた。
著者らは、この結果は超低周波磁界への母親の職業ばく露とその子における特定の脳腫瘍との間に関連があるかも知れないことを示唆している、と結論付けた。
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