この研究は、超低周波磁界(ELF MF)が細胞の細胞質基質の遊離カルシウム([Ca(2 +)](c))が重要な役割を持つシグナル伝達経路を変化させるとの報告を踏まえ、ELF MFへのばく露が[Ca(2 +)](c)を変化させる可能性のある生物学的条件について検討した。Jurkat E6.1細胞の細胞周期の異なるフェーズに同期させてELF MFばく露を行い、それぞれのばく露中に、レシオメトリック蛍光分光分析を用いて[Ca(2 +)](c)を測定した。ばく露には、ほぼゼロの磁界(Null)およびAC + DC磁界(60 Hz、100 μTの正弦波磁界に78.1μTの静磁界を共線的に重ね合わせたもの)を用いた。その結果、抗CD3抗体による刺激後に見られたベースラインを超える[Ca(2 +)](c)の最大増加は、Null処置群(n = 30)に比べ、AC + DC処置群(n = 30)で有意に高かった;両群の差は、G2-M期が豊富なサンプルへのばく露において、最も大きかった;しかし、G2-M期が豊富なサンプルを使用した実験を再び実施すると、AC + DC処置群(n = 17)とNull処置群(n = 27)で有意差はなかった;詳細な分析により、2つの実験それぞれに用いたNullサンプル間で、抗CD3による刺激の前後の[Ca(2 +)](c)のダイナミクスが同じではなかったことが示された;以上の知見から、(i)ELF MFは、抗体誘発性のシグナル伝達イベント中の[Ca(2 +)](c)を増加させた、(ii)そのようなELF MF効果は細胞周期に大きくは依存しなかったと結論される、と報告している。
細胞周期の異なる段階(G0/G1、S及びG2-M-期)に同期したJurkat E6.1細胞において、超低周波磁界ばく露中の細胞質遊離カルシウムを測定した。各々の実験で、磁界ばく露中の細胞質遊離カルシウム量の動態を、抗CD3による活性化の異なる3つの段階でモニタした:抗CD3活性化の前の安静時または基底の細胞質遊離カルシウム量、抗CD3適用後の初期の及び持続的な遊離カルシウム応答。
超低周波磁界は、幾つかの細胞シグナル伝達経路を変化させることが報告されている。これには、細胞質遊離カルシウムが重要な役割を担っている、細胞増殖、細胞分化及びアポトーシスに関与するものが含まれる。
周波数 | 60 Hz |
---|---|
タイプ |
|
波形 |
|
ばく露時間 | continuous from 300 s till 3600 s |
Additional information | Samples exposed to a combined sinusoidal and static MF. |
データは、(i) 超低周波磁界は抗体誘導性のシグナル伝達イベントの際に細胞質遊離カルシウム量を増加させること、(ii) 超低周波磁界の影響は細胞周期にさほど依存しないこと、(iii) 細胞質遊離カルシウムシグナル伝達における磁界に関連した変化は、細胞質遊離カルシウム動態における特性と相関しているようである。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。