研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ELF磁界ばく露中のJurkat細胞内の細胞質遊離カルシウム濃度のリアルタイム測定及び細胞周期の役割の評価] med./bio.

Real-time measurement of cytosolic free calcium concentration in Jurkat cells during ELF magnetic field exposure and evaluation of the role of cell cycle

掲載誌: Bioelectromagnetics 2006; 27 (5): 354-364

この研究は、超低周波磁界(ELF MF)が細胞の細胞質基質の遊離カルシウム([Ca(2 +)](c))が重要な役割を持つシグナル伝達経路を変化させるとの報告を踏まえ、ELF MFへのばく露が[Ca(2 +)](c)を変化させる可能性のある生物学的条件について検討した。Jurkat E6.1細胞の細胞周期の異なるフェーズに同期させてELF MFばく露を行い、それぞれのばく露中に、レシオメトリック蛍光分光分析を用いて[Ca(2 +)](c)を測定した。ばく露には、ほぼゼロの磁界(Null)およびAC + DC磁界(60 Hz、100 μTの正弦波磁界に78.1μTの静磁界を共線的に重ね合わせたもの)を用いた。その結果、抗CD3抗体による刺激後に見られたベースラインを超える[Ca(2 +)](c)の最大増加は、Null処置群(n = 30)に比べ、AC + DC処置群(n = 30)で有意に高かった;両群の差は、G2-M期が豊富なサンプルへのばく露において、最も大きかった;しかし、G2-M期が豊富なサンプルを使用した実験を再び実施すると、AC + DC処置群(n = 17)とNull処置群(n = 27)で有意差はなかった;詳細な分析により、2つの実験それぞれに用いたNullサンプル間で、抗CD3による刺激の前後の[Ca(2 +)](c)のダイナミクスが同じではなかったことが示された;以上の知見から、(i)ELF MFは、抗体誘発性のシグナル伝達イベント中の[Ca(2 +)](c)を増加させた、(ii)そのようなELF MF効果は細胞周期に大きくは依存しなかったと結論される、と報告している。

研究目的(著者による)

超低周波磁界ばく露細胞質遊離カルシウム量を変化させ得る生物学的条件を調べること。

詳細情報

細胞周期の異なる段階(G0/G1、S及びG2-M-期)に同期したJurkat E6.1細胞において、超低周波磁界ばく露中の細胞質遊離カルシウムを測定した。各々の実験で、磁界ばく露中の細胞質遊離カルシウム量の動態を、抗CD3による活性化の異なる3つの段階でモニタした:抗CD3活性化の前の安静時または基底の細胞質遊離カルシウム量、抗CD3適用後の初期の及び持続的な遊離カルシウム応答。

超低周波磁界は、幾つかの細胞シグナル伝達経路を変化させることが報告されている。これには、細胞質遊離カルシウムが重要な役割を担っている、細胞増殖細胞分化及びアポトーシスに関与するものが含まれる。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
ばく露時間: continuous from 300 s till 3600 s

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous from 300 s till 3600 s
Additional information Samples exposed to a combined sinusoidal and static MF.
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 Cultures were kept in a Mu-metal box (33 x 38 x 20 cm) which was kept in an incubator maintained at 37°C.
Additional information Cells were subjected to zero MF from 300 s and then subjected to either zero MF or AC+DC MF.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 78.1 µT - 指定なし - ± 0.5 µT; Static MF
磁束密度 100 µT unspecified 指定なし - ± 0.5 µT; sinusoidal MF

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露中

研究の主なアウトカム(著者による)

データは、(i) 超低周波磁界抗体誘導性のシグナル伝達イベントの際に細胞質遊離カルシウム量を増加させること、(ii) 超低周波磁界の影響は細胞周期にさほど依存しないこと、(iii) 細胞質遊離カルシウムシグナル伝達における磁界に関連した変化は、細胞質遊離カルシウム動態における特性と相関しているようである。

研究の種別:

研究助成

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