先行研究では、弱い50 Hz磁界がおそらく表皮成長因子受容体(EGFR)関連の運動経路の活性化を通じて、アクチンの細胞骨格を発動させ、細胞移動を誘発することが示されているが、磁界が微小管細胞骨格にも影響するかどうかは依然として不明である。この研究は、0.4 mTの50 Hz磁界が、アクチン細胞骨格への影響と同様に、微小管への影響にもEGFR経路が関与しているかどうかを調べた。その結果、微小管細胞骨格に対する磁界の影響は表皮成長因子(EGF)の刺激と同様であることが示唆され、1) 磁界はPC12及びFLを含む複数の種類の細胞で微小管を抑制した、2) 磁界はEGFに対するものと同様にタンパク質レベル及び細胞レベルでEGFRのクラスタリングを促進したが、PD153035阻害に対する感度はより高く、Y1173及びS1046/1047部位でのEGFRリン酸化のトリガとなった、3) これらの影響はL型カルシウムチャネル(LTCC)リン酸化及び細胞内Ca2+レベル上昇を通じたCa2+シグナル伝達に強く依存していた、ということが示された。EGFRと、磁界による細胞骨格ネットワークの再編を制御するCa2+シグナル伝達との間に強い関連が認められた。これには、有意な微小管タンパク質(タウ)を含む二つの経路におけるシグナル伝達タンパク質のリン酸化が介在していた。これらの結果は、EGFがない場合、磁界がEGFR及びLTCC/Ca2+シグナル伝達経路の両方に関連した機序を通じて、細胞骨格全体を活性化させることを示唆するものである、と著者らは結論付けている。