研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[50Hz磁界はEGF受容体のクラスタリングを生じ、RASを活性化させる] med./bio.

50-Hz magnetic field induces EGF-receptor clustering and activates RAS

掲載誌: Int J Radiat Biol 2008; 84 (5): 413-420

この研究は、著者らが以前の報告した知見を検証する実験を行った。先行研究では、50 Hz磁界MFばく露を受けたチャイニーズハムスター肺(CHL)線維芽細胞で、ストレス活性化プロテインキナーゼSAPK)とP38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(P38 MAPK)が活性化されるかも知れないこと、および50 Hz MFと同じ強度のMFノイズを同時ばく露によりこれらの影響は抑制されたことを報告した。今回は、これらの影響で考えられ得るSAPKおよびP38 MAPKの標的部位および上流シグナル伝達分子を探索し、MFノイズ抑制作用を検証するために、表皮成長因子(EGF)受容体クラスタリングおよびRasタンパク質の活性化に対するMFの作用を調べた。CHL細胞に、0.4 mT、50 Hzの正弦波MFばく露を、さまざまなばく露時間で与えた。細胞膜上のEGF受容体のクラスタリングおよびRasタンパク質活性化の評価には、免疫蛍光共焦点顕微鏡法および共沈法を用いた。EGF添加群を陽性対照とした。その結果、擬似ばく露群に比べ、5分間のばく露群ではEGF受容体クラスタリングがわずかに誘導され、15分間のばく露群ではそのクラスタリングが有意に増加した;受容体クラスタリングに対応して、Rasタンパク質も50 Hz MFばく露後に活性化された;同じ強度とばく露時間でのMFノイズ(周波数範囲30〜90 Hz)へのばく露は、EGF受容体のクラスタリングとRasタンパク質有意な影響を与えなかった;しかし、50 Hz MFにMFノイズを重畳させると、50 HzのMFによって引き起こされる受容体のクラスタリングとRasの活性化が阻害された;このような知見から、膜受容体超低周波(ELF)MFと細胞とが相互作用する最も重要な標的部位の1つであり、Rasが50 Hz MFの信号変換プロセスに関与する可能性が示唆された、と報告している。

研究目的(著者による)

本研究では、上皮成長因子受容体(EGFR)のクラスタリング及びRasタンパク質の活性化に対する超低周波磁界ばく露の影響を調べることとした。

詳細情報

100ng/mlの上皮成長因子(EGF)で処理した細胞陽性対照とした。調査したRasタンパク質は、シグナル伝達経路において重要な役割を担うがん原遺伝子である。
実験を少なくとも3回反復した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 5 min, 15 min or 30 min
ばく露2: 30–90 Hz
ばく露時間: continuous for 15 min or 30 min
ばく露3: 30–90 Hz
ばく露時間: continuous for 15 min or 30 min

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 5 min, 15 min or 30 min
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 3 groups of square copper coils (36 cm x 36 cm) with 168, 60, 168 turns (upper, middle, lower coils), connected in series and spaced 8 cm apart, placed in an iron metal container; culture dishes placed inside the coil system
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.4 mT - 測定値 - -

ばく露2

主たる特性
周波数 30–90 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 continuous for 15 min or 30 min
Additional information white noise
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 3 groups of square copper coils (36 cm x 36 cm) double-wrapped with two lines of copper wire, placed in an iron metal container; culture dishes placed inside the coil system
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.4 mT mean 測定値 - -

ばく露3

主たる特性
周波数 30–90 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 15 min or 30 min
Additional information 30 Hz - 90 Hz white noise + 50 Hz sinusoidal
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 3 groups of square copper coils (36 cm x 36 cm) double-wrapped with two lines of copper wire, placed in an iron metal container; culture dishes placed inside the coil system
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.4 mT - 測定値 - -

Reference articles

  • Zeng Q et al. (2006): [ノイズ磁界は50Hz磁界によって生じたギャップ結合細胞間情報伝達の抑制を打破する]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

50Hz磁界への5分間の単独ばく露は、上皮成長因子受容体のクラスタリングを僅かに生じたが、15分間の磁界ばく露受容体のクラスタリングを有意に強めた。Rasタンパク質も50Hz磁界への単独ばく露後に活性化した。
強度と持続時間が同じノイズ磁界への単独ばく露は、EGF受容体のクラスタリング及びRasタンパク質有意な影響を生じなかった。但し、ノイズ磁界を重ね合わせると、50Hz磁界による受容体のクラスタリングとRasの活性化が阻害された。
これらのデータは、膜受容体が、超低周波磁界細胞と相互作用する最も重要なターゲットの一つであり得、Rasが50Hz磁界シグナル伝達プロセスに関与しているかも知れないことを示唆している。更に、ノイズ磁界はこれらの影響を阻害し得る。

研究の種別:

研究助成

関連論文