この研究は、著者らが以前の報告した知見を検証する実験を行った。先行研究では、50 Hz磁界(MF)ばく露を受けたチャイニーズハムスター肺(CHL)線維芽細胞で、ストレス活性化プロテインキナーゼ(SAPK)とP38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(P38 MAPK)が活性化されるかも知れないこと、および50 Hz MFと同じ強度のMFノイズを同時ばく露によりこれらの影響は抑制されたことを報告した。今回は、これらの影響で考えられ得るSAPKおよびP38 MAPKの標的部位および上流シグナル伝達分子を探索し、MFノイズの抑制作用を検証するために、表皮成長因子(EGF)受容体クラスタリングおよびRasタンパク質の活性化に対するMFの作用を調べた。CHL細胞に、0.4 mT、50 Hzの正弦波MFばく露を、さまざまなばく露時間で与えた。細胞膜上のEGF受容体のクラスタリングおよびRasタンパク質活性化の評価には、免疫蛍光共焦点顕微鏡法および共沈法を用いた。EGF添加群を陽性対照とした。その結果、擬似ばく露群に比べ、5分間のばく露群ではEGF受容体クラスタリングがわずかに誘導され、15分間のばく露群ではそのクラスタリングが有意に増加した;受容体クラスタリングに対応して、Rasタンパク質も50 Hz MFばく露後に活性化された;同じ強度とばく露時間でのMFノイズ(周波数範囲30〜90 Hz)へのばく露は、EGF受容体のクラスタリングとRasタンパク質に有意な影響を与えなかった;しかし、50 Hz MFにMFノイズを重畳させると、50 HzのMFによって引き起こされる受容体のクラスタリングとRasの活性化が阻害された;このような知見から、膜受容体が超低周波(ELF)MFと細胞とが相互作用する最も重要な標的部位の1つであり、Rasが50 Hz MFの信号変換プロセスに関与する可能性が示唆された、と報告している。
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 5 min, 15 min or 30 min |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 3 groups of square copper coils (36 cm x 36 cm) with 168, 60, 168 turns (upper, middle, lower coils), connected in series and spaced 8 cm apart, placed in an iron metal container; culture dishes placed inside the coil system |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.4 mT | - | 測定値 | - | - |
周波数 | 30–90 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | continuous for 15 min or 30 min |
Additional information | white noise |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 3 groups of square copper coils (36 cm x 36 cm) double-wrapped with two lines of copper wire, placed in an iron metal container; culture dishes placed inside the coil system |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.4 mT | mean | 測定値 | - | - |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 3 groups of square copper coils (36 cm x 36 cm) double-wrapped with two lines of copper wire, placed in an iron metal container; culture dishes placed inside the coil system |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.4 mT | - | 測定値 | - | - |
50Hz磁界への5分間の単独ばく露は、上皮成長因子受容体のクラスタリングを僅かに生じたが、15分間の磁界ばく露は受容体のクラスタリングを有意に強めた。Rasタンパク質も50Hz磁界への単独ばく露後に活性化した。
強度と持続時間が同じノイズ磁界への単独ばく露は、EGF受容体のクラスタリング及びRasタンパク質に有意な影響を生じなかった。但し、ノイズ磁界を重ね合わせると、50Hz磁界による受容体のクラスタリングとRasの活性化が阻害された。
これらのデータは、膜受容体が、超低周波磁界が細胞と相互作用する最も重要なターゲットの一つであり得、Rasが50Hz磁界のシグナル伝達プロセスに関与しているかも知れないことを示唆している。更に、ノイズ磁界はこれらの影響を阻害し得る。
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