この研究は、職業ばく露でみられる強度の電力周波磁界が心拍(HR)に影響を与えるか否かを調べた。これまでに報告されているHRへの影響は非常に小さい。このような微妙な変化を同定するための工夫として、制御された方法で交感神経バランスの変化を引き起こす手法を採用した。すなわち、被験者に仰向けで頭を上に60度あげた傾斜姿勢をとらせる手法である。被験者(n = 20)に、2つの条件(磁界ばく露および擬似ばく露)下で、傾斜姿勢をとらせ、その間HRを測定した。実験は、二重ブラインド化、カウンターバランスデザインで実施され、磁界は、磁束密度28 μT(レザルタント値)の円偏波磁界であった。被験者は、音の合図に合わせ、2.5秒間隔で呼吸するように指示された。その結果、予想通り、傾斜姿勢では、HR、高周波(HF)、低周波(LF)、LF / HF比(対数変換)の有意な変化が引き起こされたが、磁界ばく露の有無別にみたこれら測定値には有意差がなかった;また、傾斜姿勢をとってからの時間を256秒ずつの3つの区間に分割した場合のスペクトルの変化にも、磁界の関連は示されなかった、と報告している。
交感神経制御が増加し、生理学的攪乱が最小となる条件を得るため、受動的傾斜を用いた。受動的傾斜は、交感神経迷走神経のバランスを定量化するための非侵襲性の方法で、中枢駆動及び筋肉活動の関与が最小限であり、スペクトル解析に適した極めて正確な静止条件と両立する。
傾斜手順は、被験者の姿勢を仰臥から所定の角度に受動的に変化させる(健康な被験者では受動的傾斜は低周期の心拍変動、及び心拍数の交感神経変調に増加を生じる)。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 15 min
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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偏波 |
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ばく露時間 | continuous for 15 min |
Additional information | Power frequency magnetic field relevant to industrial exposure. |
ばく露の発生源/構造 |
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ばく露装置の詳細 | Subjects were loosely strapped to a table which was tilted at 60°. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 28 µT | unspecified | 指定なし | - | - |
傾斜時の交感神経迷走神経バランスは、偽ばく露と磁界ばく露で同じままであった(測定したパラメータに有意差はなかった)。このデータは、交感神経優位の状態は、本実験プロトコルで用いた磁界ばく露に対する交感神経の心拍変動制御メカニズムの感受性を高めないことを示唆している。
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