研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[磁界ばく露後のグルコース刺激性インスリン分泌の減少] med./bio.

Decrease in glucose-stimulated insulin secretion following exposure to magnetic fields

掲載誌: Biochem Biophys Res Commun 2005; 332 (1): 28-32

本研究では、超低周波磁界(ELF-MF)が、HIT-T15細胞からのグルコース刺激インスリン分泌に及ぼす影響を測定し、影響のメカニズムを調査した。ここで、5mTのELF-MFばく露は、細胞のアデノシン5’三リン酸/アデノシン5’二リン酸、膜の脱分極細胞質遊離カルシウムイオン濃度における上昇を妨げることによって、グルコース刺激インスリン分泌を減少させることが証明された。また、インスリンmRNA発現グルコース誘発性上方調節もELF-MFばく露によって弱められたが、細胞の生存は影響を受けなかった。これらの発見によって、ELF-MFばく露インスリン分泌の新しい抑制法として臨床に活用する可能性が示された。

研究目的(著者による)

HIT-T15細胞からのグルコース刺激インスリン分泌に対する超低周波磁界の影響、及びそのメカニズムを調査すること。

詳細情報

インスリンは血糖値の制御に関与している。インスリンの不十分な放出は様々な形態の糖尿病につながる。
グルコース刺激インスリン分泌のメカニズムは以下の通りである:グルコース代謝の強化は細胞内ATP/ADPを増加させ、ATP依存性カリウム(KATP)チャネルを閉じる。同時に、膜脱分極が生じ、これが電圧依存性カルシウムチャネルを開かせ、遊離した細胞質カルシウムイオン濃度を高め、インスリン分泌を刺激する(KATP依存性経路)。
HIT-T15細胞を用いたのは、グルコースに対する反応性が比較的高いためである。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
ばく露時間: continuous for 15 min
Insulin secretion test
ばく露2: 60 Hz
ばく露時間: continuous for 10 min
immediately after flow cytometric analysis

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • unspecified
ばく露時間 continuous for 15 min
Additional information Insulin secretion test
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • *a pair of magnetic cores (240 mm x 340 mm) made of stacked silicon steel plates
ばく露装置の詳細 *acrylic CO2 incubator installed in the inner gap of the core. Cells were incubated in 0.4 mL KRBB (0) or Herpes buffered KRBB containing 0.2% BSA and 200 mg/dL glucose
Additional information *information obtained from the reference article.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 400 µT unspecified 測定値 - -
磁束密度 5 mT unspecified 測定値 - -
磁束密度 1 mT unspecified 測定値 - -

ばく露2

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • unspecified
ばく露時間 continuous for 10 min
Additional information immediately after flow cytometric analysis
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
ばく露装置の詳細 Aliquot of cell suspension containing glucose dissolved in KRBB (200 mg/dL) was incubated at 37°C.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 5 mT unspecified 測定値 - -
磁束密度 400 µT unspecified 測定値 - -
磁束密度 1 mT unspecified 測定値 - -

Reference articles

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

結果は、超低周波磁界(5mT)へのばく露はHIT-T15細胞からのグルコース刺激インスリン分泌を減少させることを示した。グルコース刺激がない、またはより低い磁束密度(1mT未満)へのばく露の場合、インスリン分泌は変化しなかった。
細胞メカニズム分析では、超低周波磁界ばく露細胞ATP/ADP、膜脱分極細胞質遊離カルシウムイオン濃度の上昇を妨げることがわかった。グルコースによるインスリンmRNA発現上方制御も、超低周波磁界ばく露によって減弱したが、細胞の生存能力は悪化しなかった。
著者らは、この知見は、2型糖尿病治療における過剰なインスリン分泌の新たな抑制方法としての超低周波磁界ばく露の臨床的利用の潜在的可能性を示すものであると示唆した。(評価者の注記:2型糖尿病では、インスリンに対する細胞の反応性の低下によるインスリン産出の増加がある。)

研究の種別:

研究助成

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