先行研究では、時間変化する電磁界ばく露がテストステロンの分泌を阻害し得ることが示されている。この研究は、直流送電線から生じる時間変化しない電界がテストステロン合成に及ぼす影響を調べるため、雄のICRマウスを連続的に(24時間/日)56.3 ± 1.4 kV/mの静磁界にばく露した。その結果、ばく露3日目および28日間のばく露終了後から7日目に、血清テストステロンのレベルおよび精巣の酸化ストレス指標に有意な変化は認められなかった。ばく露28日目には、血清テストステロンのレベル、精巣のグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)活性、精巣のStAR、PBR、CYP11A1のmRNAタンパク質レベルは有意に低下し、精巣のマロンジアルデヒド(MDA)含有量は有意に増加した。一方、ライディッヒ細胞の脂肪滴には電子密度の高い端部と空胞化が認められた。ミトコンドリア内膜とミトコンドリア外膜のギャップは拡大し、これはミトコンドリアの膨張、ミトコンドリア膜の破裂および欠損を生じた。分析の結果、精巣の酸化ストレスがライディッヒ細胞のミトコンドリアの構造の損傷を生じ、これが細胞質からミトコンドリアへのコレステロール輸送速度を低下させ得ることが示された。コレステロールはテストステロン合成に必要な前駆体であることから、テストステロン合成が阻害された。精巣のStARおよびPBRのmRNAおよびタンパク質発現レベルの低下は、ミトコンドリア外膜からミトコンドリア内膜へのコレステロール輸送を減少させ得る。mRNAおよびCYP11A1のタンパク質発現レベルの低下は、テストステロン合成に必要なプレグネノロンを減少させ、結果的にテストステロン合成を阻害し得る、と著者らは結論付けている。
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