この研究は、著者らの以前のマウス実験研究に続く研究である。以前の研究では、超低周波磁界(ELF-MF)の反復ばく露が、ドーパミン作動性D1受容体の刺激を介してマウスの自発運動を増加させることを示した。また、アクチベータータンパク質1転写因子、特にFos関連抗原(FRA)は、種々の刺激に反応した神経および行動の適応に重要な役割を持つことが知られている。そこで、本研究では、ELF-MFの反復ばく露が、マウスの線条体および側坐核(線条体複合体)にFRA免疫反応性(FRA-IR)を誘発するか否かを調べた。その結果、ELF-MFへの反復ばく露(0.3または2.4 mT、1時間/日、連続14日間)は、磁束密度依存的に運動活動亢進および線条体複合体でのFRA-IRを有意に誘発した;ELF-MFによって誘発されたFRA-IRは少なくとも1年間持続したが、自発運動はELF-MFへの最後のばく露から3か月後に対照レベルにまで戻った;ドーパミン作動性D1受容体の拮抗薬であるSCH23390を事前投与する、ELF-MF誘発性の運動活動亢進およびFRA-IRは有意に弱まったが、ドーパミン作動性D2受容体拮抗薬であるスルピリド投与の場合にはこのような変化は見られなかった、と報告している。
7群のマウスを調べた(各n=30):1) 非ばく露+生理食塩水注射(対照群)、2) 0.3mTでばく露+生理食塩水注射、3) 2.4mTでばく露+生理食塩水注射、4) 2.4mTでばく露+体重1kgあたり0.03mgのSCH注射(SCH23390塩酸塩、ドーパミン作動性D1受容体遮断薬)、5) 2.4mTでばく露+体重1kgあたり0.1mgのSCH注射、6) 2.4mTでばく露+体重1kgあたり10mgのSulp注射(スルピリド、ドーパミン作動性D2受容体遮断薬)、7) 2.4mTでばく露+体重1kgあたり20mgのSulp注射。
14日間の毎日のばく露の30分前に、食塩水、SCH及びSulpを注射した。ばく露期間の直後、1日後、1週間後、3か月後及び1年後の自発運動活動を調べた(それぞれの時点で各群6匹ずつ)。自発運動活動の測定の90分後に動物を屠殺し、免疫組織化学分析を実施した。
animals were treated with SCH23390 hydrochloride or sulpiride 30 min before exposure
ばく露群(グループ2及び3)では対照群と比較して、磁界強度に依存して、ばく露期間の1日後に(2.4mTばく露では1週間後にも)、自発運動活動が有意に増加したが、3か月後には対照群とほぼ同レベルに戻った。SCH投与(グループ4及び5)では生理食塩水注射群(グループ3)と比較して、自発運動活動が有意に減少したが、Sulp投与群(グループ6及び7)では減少しなかった。
全てのばく露マウスの線条体及び側坐核では、対照群と比較して、Fos関連抗原の免疫反応性が磁界強度に依存して有意に高まった。最も高いレベルはばく露期間の直後に見られた。これは1年を通じて連続的に低下したが、対照群より有意に高いままであった。SCH注射は2.4mTばく露+生理食塩水注射と比較して、Fos関連抗原の免疫反応性を有意に低下させたが、Sulpは低下させなかった。但し、数値は対照群よりは有意に高いままであった。
この結果は、超低周波磁界ばく露はドーパミン作動性D1受容体の刺激を通じて、マウスの脳内のFos関連抗原の免疫応答性を生じ、自発運動活動を高めることを示している。
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