この研究は、携帯電話の長期使用者を対象に、GSM信号およびCDMA信号への慢性的ばく露が内耳レベルおよび中枢聴覚経路レベルでの聴覚機能に影響を与えているか否かを調査したコホート研究である。携帯電話の長期使用者群(n = 125)は、1年以上、GSM(n = 63)またはCDMA(n = 62)携帯電話を使用した人で構成された。対照群(n = 58)は携帯電話の使用経験がない人で構成された。両群の被験者に、純音聴力検査(250 Hz - 12 kHz)、ティンパノメトリー(鼓膜聴力検査)、歪成分耳音響放射(DPOAE)、聴性脳幹反応(ABR)、および聴性中間反応(MLR)の測定を行なった。さまざまなパラメータの変化を、GSMおよびCDMAの被験者での携帯電話の使用耳と非使用耳、対照群の人での対応する耳で測定した。その結果、GSMおよびCDMA使用者群では、対照群に比べ、DPOAE反応なしとなるリスクが有意に高いことが示された;GSMおよびCDMA使用者群では、音声周波数での聴覚閾値上昇、MLR波およびそのPa成分とNa成分の振幅の低下が見られた;3年以上の携帯電話使用がリスク因子として浮かび上がった;損傷は両側性であり、その大きさはGSMとCDMAの両方で同じであった、と報告している。
全ての参加者を、以下を含む複数の聴覚検査に取り込んだ:純音聴力検査、音声識別スコア、語音聴取閾値、インピーダンス聴力検査、歪成分耳音響放射(DPOAE)、聴性脳幹反応(ABR)、中間潜時反応検査。
携帯電話の慢性使用は1年超の使用と定義した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 携帯電話の非ユーザー:対照 |
集団 2 | GSMユーザー |
集団 3 | CDMAユーザー |
集団 4 | GSMユーザー、累積使用: < 3年 |
集団 5 | GSMユーザー、累積使用: > 3年 |
集団 6 | CDMAユーザー、累積使用: < 3年 |
集団 7 | CDMAユーザー、累積使用: > 3年 |
タイプ | 値 |
---|---|
参加者 | 183 |
GSM及びCDMA携帯電話ユーザーでは、対照群と比較して、歪成分耳音響反射(DPOAE)欠損の有意に高いリスクが認められた。彼らは、音声周波数閾値がより高く、中間潜時反応のNa 及び Pa 振幅がより低かった。携帯電話を3年超使用していた被験者には、3年未満使用していた人々と比較して、聴覚パラメータにおける変化の増加が認められた。生じたダメージは両側性で、ダメージの量はGSMとCDMAで同じであった。
著者らは、長期間の集中的なGSM及びCDMA携帯電話使用は蝸牛ならびに聴覚皮質のダメージを生じ得る、と結論付けている。
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