この研究は、ヒトHL-60白血病細胞に、放射線(200kV X線、5 Gy)、超低周波磁界(ELF-EMF、50 Hz、60 ± 0.2 μT)および/または熱ショック(HS、41 °Cの温熱に30分間)のばく露を与え、熱ショック遺伝子(HSP27、HSP60、HSP70、HSP75、HSP78、HSP90)の発現への影響をRT-PCR検査により評価した。さらに、この3つのストレッサーが、指数関数的および非同期的に増殖する細胞培養における細胞周期の進行に与える影響をフローサイトメトリーにより評価した。連続する細胞周期中の細胞分裂動態を、カルボキシフルオレセイン・スクシンイミジルエステル(CFSE)で細胞を蛍光標識してモニタした。最後に、ヨウ化プロピジウム(PI)染色により、細胞周期の分布を調べた。その結果、HSP遺伝子発現に関して、3つのストレッサーは同様の効果を生じさせた;ストレッサーの組み合わせ(ELF-EMFとHSまたは放射線とHS)は、各ストレッサー単独での誘導レベルを上回るほど強く、HSP70遺伝子の転写を誘導した;細胞周期分析では、各ストレッサーに対する細胞応答の著しい違いが示された;特に興味深いのは、熱ショックばく露を受けた細胞において、ELFEMFが熱の影響からの保護効果を示したことである;熱ストレスの存在下でX線ばく露を受けた細胞では、このような保護効果は見られなかった、と報告している。
細胞を以下の条件にばく露した:
1) エックス線(5Gy、線量率1.2Gy/分)、2) 熱ショック(41℃で30分間)、3) 磁界、4) エックス線+熱ショック、5) 磁界+熱ショック、6) エックス線+磁界、7) 対照群
ばく露 | パラメータ |
---|---|
ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 30 min.
|
|
cells were treated with 1) X-rays 2) heat shock 3) 50 Hz EMF 4) X-rays + heat shock 5) 50 Hz EMF + heat shock 6) X-rays + 50 Hz EMF
エックス線及び熱ショックは対照群と比較して、細胞増殖及び細胞周期分布に有意に影響力を及ぼしたが、磁界ばく露した細胞培地ではこれらのパラメータは有意に変わらなかった。磁界ばく露と熱ショックの組合せは、熱ショックによる影響を緩和した。但し、エックス線と磁界の組合せではそのような防護作用は認められなかった。
熱ショック処理単独、ならびにエックス線及び磁界との組み合わせは、対照群の細胞培地と比較して、HSP27、HSP70、HSP75、HSP78のタンパク質発現のレベルの有意な上昇につながったが、磁界ばく露単独ではHSP70の発現のみが有意に上昇した。
著者らは、超低周波磁界はヒト白血病細胞株でのHSP70のタンパク質発現のレベルを変化させ得るが、細胞増殖及び細胞周期には影響力を及ぼさない、と結論付けている。更に、熱ショック細胞では磁界の防護作用が認められたが、エックス線照射細胞では認められなかった。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。