この研究は、ラットの全身ばく露後の脳組織切片の検査、あるいは脳組織切片へのex vivo(体外)ばく露を行った後の切片の検査など一連の実験を行い、50 Hzの電磁界(ELF-EMF:250 - 500 μT(ICNIRPの参考レベル値))が中枢神経系のシナプス効率に与える影響を調べた。電気生理学的検査は、新皮質および海馬の切片に対してex vivoで実施され、基本的なシナプス機能、短期および長期の可塑性とけいれん感受性を評価した。その結果、最も顕著な効果は、ex vivoばく露を受けた切片における基本的なシナプス活動の減少であり、それは誘発電位振幅の減少として観察された;一方、全身ばく露後に調整した切片においては、海馬切片での短期および長期のシナプス促通増強および新皮質切片でのけいれん感受性上昇が観察された;ただし、これらの影響は一過性のように見えた;結論として、ELF-EMFばく露はシナプス活動に有意な影響を起こすが、それによる全体的な変化は、EMFの空間パラメータと不変性とともに、それを受ける脳領域のシナプス構造とニューロンネットワークに強く依存する可能性がある、と報告している。
本実験のあるパートでは、ラットの全身ばく露を実施し(60時間ばく露群にラット11匹、15時間ばく露群に10匹、偽ばく露群に10匹)、前処理した動物から作成した脳切片を調べた。本研究の別のパートでは、非処理ラット11匹の新皮質及び海馬の切片を解剖直後にばく露した。文献に基づき、職業ばく露についての参考レベル(ICNIRPのガイドライン、1998))に従い、電磁界強度(250-500mT、50Hz)を選択した。
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 15 h/day on 1 day or 4 consecutive days |
Additional information | whole body exposure |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | Helmholtz coil apparatus consisting of two solenoids with a radius of 21 cm each, 21 cm apart; coils constructed of 240 turns of glaze-insulated copper wire (d=1.4 mm); rats placed in 35 cm x 35 cm x 17 cm opaque plastic boxes in the center of the coils |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 500 µT | - | 測定値 | - | - |
最も強い影響は、生体外で直接曝露した切片における基本的なシナプス活性の低下で、これは誘発電位の振幅の低下として観察された。他方、ラットの全身ばく露後に、海馬切片での短期的及び長期的なシナプス応答の亢進の強化、ならびに新皮質切片でのけいれん感受性の上昇が見られた(生体外ばく露と反対の影響)。但し、これらの影響は一過性のようである。
著者らは、超低周波電磁界ばく露はシナプス活性に有意な影響を惹起し得るが、全体的な変化は影響される部位のシナプスの構造とニューロンのネットワーク、ならびに特定の空間パラメータ及び電磁界ばく露の安定性に強く依存するかも知れない、と結論付けている。
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