この研究は、ATP合成酵素(ATPase)の活性に対する超低周波(ELF)磁界の影響を調べた。ATPaseの構造は、プロトン勾配を回転運動に変換する膜部分の F(0)モータと、ATPを合成する触媒部分の F(1)モータからなるため、F(0)F(1)-ATPaseと表現される。異なる磁束密度の60 Hz磁界にばく露した場合、0.3および0.5 mTの磁界で加水分解活性が増強されたが、0.1mTでは有意な変化が見られなかった。F(0)F(1)-ATPaseをN、N-ジシクロヘキシルカルボジイミドにより阻害した場合においてさえ、その加水分解活性は0.5 mT 60Hzの磁界によって増強された。さらに、F-DHPEで標識された色素胞に0.5 mT、60 Hzの磁界ばく露を与えた場合、色素胞の外膜のpHは変化しないことが示され、このことから、磁界はF0の活性には影響しないと解釈された。以上の知見から、F(0)F(1)-ATPaseの加水分解活性に対する磁界の影響には磁束密度依存性があること、閾値は0.1 - 0.3 mTであること、影響のエンドポイントはF1である可能性が示された、と報告している。
F0F1-ATPアーゼは、膜に埋め込まれた部分のF0と、親水性触媒部分のF1からなる。F0F1-ATPアーゼは2つの主要な「エネルギーの流れ」(陽子とATPの膜貫通電気化学的電位差)を相互変換する。
F0F1-ATPアーゼを、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD、F0サブユニットの抑制のため)及び塩化リチウム(加水分解の抑制のため)で処理した。加えて、色素胞をpHインジケータF-DHPEでラベル付けした(陽子輸送実験(F0の機能は陽子の輸送である))。
周波数 | 60 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 20 min |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | two 12 cm x 6 cm rectangular coils; each coil consisting of two sub-coils with 100 turns of 1 mm copper wire each, separated by 7 cm; non-uniformity of the magnetic field in the exposue aerea < 2% |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
60Hz磁界はF0F1-ATPアーゼの酵素活性を高めた。この影響は磁界強度に依存していた:0.3及び0.5mT磁界は加水分解活性を高めたが、0.1mT磁界ばく露は有意な変化を生じなかった。磁界は主にF1サブユニットに影響した:DCCDがF0F1-ATPアーゼを抑制した(F0を抑制した)としても、0.5mT磁界は加水分解活性を高めた。更に、F-DHPEでラベル付けした色素胞を0.5mTにばく露したところ、色素胞の外膜のpHは変化しなかった。
このデータは、ヒトの健康に対する磁界の影響と、膜F0F1-ATPアーゼに対する磁界の影響との関連を探求する新たな方法を示しているかも知れない(F1が磁界による影響の標的かも知れない)。
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