この研究は、マウス骨芽細胞様MC3T3-E1細胞の分化に対する超低周波磁界(ELF-MF:3 mT、60 Hz)へのばく露の影響を、インスリン様成長因子I(IGF-I)の添加と共に調べた。分化のマーカとして、細胞性コラーゲン含有量をイメージング顕微分光法で510〜520 nmの波長で測定されたシリウス赤染色細胞の吸光度により測定した。その結果、ELF-EMFへのばく露により、細胞内のコラーゲンが有意に増加した;細胞外シグナル調節キナーゼ1/2(ERK1 / 2)活性化の阻害剤であるPD98059の処理は、対照群、IGF-I添加群およびELF-EMFばく露群のすべての細胞でコラーゲンを減少させたが、PD98059はELF-EMFばく露によって誘発されたコラーゲンの増加は阻害できなかった;また、IGF-Iも阻害剤の存在下でコラーゲンを増加させた:ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)経路がLY294002によって阻害された場合、ELF-EMFばく露によって誘発されたコラーゲンの増加は加速されたが、IGF-Iの添加によって観察されたコラーゲンの増加は抑制された;p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(p38 MAPK)の阻害剤であるSB203580の処理は、ELF-EMFばく露によって誘発されるコラーゲンの増加を抑制したが、IGF-I添加は阻害剤の存在下でコラーゲンを増加させた;これらの知見は、ELF-EMFばく露によって誘発されたコラーゲン合成がp38 MAPK経路の関与によること、およびPI3K経路がELF-EMFばく露によって誘発されたコラーゲン合成を抑制する役割を果たしていること、およびPI3K経路の抑制がコラーゲン合成を加速するかもしれないことが示唆された、と報告している。
加えて、細胞分化メカニズムへの洞察を得るため、インスリン様成長因子(IGF-1)及びシグナル伝達阻害薬(細胞外シグナル制御キナーゼ1/2、ホスファチジルイノシトール3 - キナーゼ、及びp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)と電磁界ばく露の有無の影響を評価した。14及び21日間の培養期間後に細胞を調べた。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
60 Hz
ばく露時間:
last 3 days of culture period
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周波数 | 60 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | last 3 days of culture period |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | coil consisting of primary and secondary windings wound round a polyvinyl chloride container with an inner diameter of 34.5 cm and an outer diameter of 37 cm; primary coil consisting of 150 turns of 2.12 mm enameled wire; second coil separated into two pieces, each made of three layers with 33 turns of 2.12 mm enameled wire; coil placed inside a plastic container; cells inside a CO2 incubator in the center of the coil |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 3 mT | - | - | - | - |
超低周波磁界へのばく露は細胞内コラーゲンを有意に増加させた。
細胞外シグナル制御キナーゼ1/2の阻害薬での処理は、調査した全ての細胞(対照群、インスリン様成長因子I処理群、超低周波磁界への単独ばく露群または共ばく露群)で、コラーゲン量を低下させた。但し、細胞外シグナル制御キナーゼ1/2の阻害薬は、ばく露、及びインスリン様成長因子I単独による細胞内コラーゲンの増加を防止しなかった。ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ経路の阻害薬は、ばく露後の細胞内コラーゲンの増加を加速した。但し、インスリン様成長因子Iの添加によって観察されたコラーゲンの増加は抑制された。p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼの阻害薬は、ばく露によるコラーゲン増加を抑制したが、インスリン様成長因子Iの添加は、この阻害薬の存在下でもコラーゲンを増加させた。
これらのデータは、超低周波磁界ばく露によるコラーゲン合成はp38MAPK経路の参加によって実施されること、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ経路がコラーゲン合成を抑制する役割を担っているかも知れないこと、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ経路の抑制はばく露によるコラーゲン合成を加速させるかも知れないこと、を示唆している。
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