研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ヒト神経細胞モデルにおけるPHOX2A、PHOX2B及びそれらのターゲット遺伝子ドーパミン‐ベータ‐ヒドロキシラーゼ(DbetaH)の発現は超低周波電磁界(ELF-EMF)ばく露によって改変されない] med./bio.

The expression of PHOX2A, PHOX2B and of their target gene dopamine-beta-hydroxylase (DbetaH) is not modified by exposure to extremely-low-frequency electromagnetic field (ELF-EMF) in a human neuronal model

掲載誌: Toxicol In Vitro 2008; 22 (6): 1489-1495

この研究は、ヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Yを用いて、超低周波磁界(ELF-MFばく露が、レチノイン酸によってトリガーされる分化の過程で、ホメオドメイン転写因子PHOX2A、PHOX2BおよびDβHなどの発現レベルに影響を与えるか否かを調べた。PHOX2AとPHOX2Bは、自律神経系の発達に不可欠である。胚発生で生じる神経堤におけるこれらの空間的および時間的発現は、ニューロン前駆体の運命を決定するもので、ドーパミンからのノルアドレナリン合成触媒する酵素であるドパミンβ水酸化酵素(DβH)の発現を調節することで、ノルアドレナリン作動性表現型の決定にも役割を持つ。さまざまな磁束密度およびさまざまなばく露時間で、ヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Yに50 Hzの電力線磁界ばく露を与え、これらの遺伝子発現を測定し、タンパク質レベルでの変化も調べた。その結果、実験したばく露プロトコルにおいては、自律神経系カテコールアミン作動系の重要なコンポーネントの転写レベルおよびタンパク質レベルに変化は見られなかった、と報告している。

研究目的(acc. to editor)

ヒト神経芽腫細胞株におけるPHOX2A、PHOX2B及びドーパミン‐ベータ‐ヒドロキシラーゼの遺伝子発現及びタンパク質発現に対する超低周波電磁界の影響を調べること。

詳細情報

PHOX2A及びPHOX2Bは、ニューロンの特異化及び分化必須の転写因子である。これらは中枢神経系での全てのノルアドレナリン作動性及びアドレナリン作動性ニューロンに認められ、ドーパミン‐ベータ‐ヒドロキシラーゼ(ドーパミンノルエピネフリンに変換する酵素)を発現させる。PHOX2AとPHOX2Bのどちらも、ドーパミン‐ベータ‐ヒドロキシラーゼのプロモータを活性化させることができる。

著者らは、超低周波電磁界がPHOX2A、PHOX2B及びドーパミン-ベータ-ヒドロキシラーゼの発現に影響を及ぼし、これらの因子の空間的及び時間的なバランスの制御を攪乱させ、発達不良または自律神経機能障害につながり得るかどうかという仮説を検証した。

本研究は、欧州連合が資金助成したREFLEXプロジェクト(敏感なイン・ビトロ手法を用いた低エネルギー電磁界ばく露からの潜在的環境ハザードリスク評価)の一部である。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
Modulation type: pulsed
ばく露時間: intermittent, 5 min on - 5 min off, for 16 h
ばく露2: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 16 h
ばく露3: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 48 h

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 intermittent, 5 min on - 5 min off, for 16 h
Modulation
Modulation type pulsed
Rise time 3 s
Fall time 3 s
Additional information

linearly ramped

ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • 詳細不明
  • see reference articles
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 2 mT effective value - - -
磁束密度 1 mT effective value - - -

ばく露2

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 continuous for 16 h
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 2 mT effective value - - -
磁束密度 1 mT effective value - - -

ばく露3

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 continuous for 48 h
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT effective value - - -

Reference articles

  • Antonini RA et al. (2006): [超低周波電磁界はSH-SY5Y神経芽腫細胞株におけるアルファ3、アルファ5及びアルファ7ニコチン性受容体のサブユニット遺伝子の発現に影響しない]
  • Schuderer J et al. (2004): [低周波磁界用In vitroばく露装置。]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

自律神経系及びカテコールアミン作動系のこれらの重要な要素の転写またはタンパク質レベルに変化は認められなかった。

研究の種別:

研究助成

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