この研究は、ヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Yを用いて、超低周波磁界(ELF-MF)ばく露が、レチノイン酸によってトリガーされる分化の過程で、ホメオドメイン転写因子PHOX2A、PHOX2BおよびDβHなどの発現レベルに影響を与えるか否かを調べた。PHOX2AとPHOX2Bは、自律神経系の発達に不可欠である。胚発生で生じる神経堤におけるこれらの空間的および時間的発現は、ニューロン前駆体の運命を決定するもので、ドーパミンからのノルアドレナリン合成を触媒する酵素であるドパミンβ水酸化酵素(DβH)の発現を調節することで、ノルアドレナリン作動性表現型の決定にも役割を持つ。さまざまな磁束密度およびさまざまなばく露時間で、ヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Yに50 Hzの電力線磁界ばく露を与え、これらの遺伝子発現を測定し、タンパク質レベルでの変化も調べた。その結果、実験したばく露プロトコルにおいては、自律神経系とカテコールアミン作動系の重要なコンポーネントの転写レベルおよびタンパク質レベルに変化は見られなかった、と報告している。
PHOX2A及びPHOX2Bは、ニューロンの特異化及び分化に必須の転写因子である。これらは中枢神経系での全てのノルアドレナリン作動性及びアドレナリン作動性ニューロンに認められ、ドーパミン‐ベータ‐ヒドロキシラーゼ(ドーパミンをノルエピネフリンに変換する酵素)を発現させる。PHOX2AとPHOX2Bのどちらも、ドーパミン‐ベータ‐ヒドロキシラーゼのプロモータを活性化させることができる。
著者らは、超低周波電磁界がPHOX2A、PHOX2B及びドーパミン-ベータ-ヒドロキシラーゼの発現に影響を及ぼし、これらの因子の空間的及び時間的なバランスの制御を攪乱させ、発達不良または自律神経機能障害につながり得るかどうかという仮説を検証した。
本研究は、欧州連合が資金助成したREFLEXプロジェクト(敏感なイン・ビトロ手法を用いた低エネルギー電磁界ばく露からの潜在的環境ハザードのリスク評価)の一部である。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
Modulation type:
pulsed
ばく露時間:
intermittent, 5 min on - 5 min off, for 16 h
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ばく露2:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 16 h
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ばく露3:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 48 h
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | intermittent, 5 min on - 5 min off, for 16 h |
Modulation type | pulsed |
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Rise time | 3 s |
Fall time | 3 s |
Additional information |
linearly ramped |
ばく露の発生源/構造 |
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Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | continuous for 48 h |
ばく露の発生源/構造 |
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Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1 mT | effective value | - | - | - |
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