著者:
Soleimani M, Golab F, Alizadeh A, Rigi S, Samani ZN, Vahabzadeh G, Peirovi T, Sarbishegi M, Katebi M, Azedi F
掲載誌: J Cell Physiol 2019; 234 (10): 18720-18730
電磁界はフリーラジカル産生に関与する化学反応に干渉することが報告されている。コエンザイムQ10(CoQ10)[ミトコンドリアにおけるエネルギー産生を助ける栄養素]は神経保護活性を有する強力な抗酸化物質である。この研究は、海馬損傷のマウスモデルにおいて電磁界とCoQ10の神経防護作用を調査・比較した。成熟した雌マウス(25-30 g)に水酸化トリメチルスズ(TMT、2.5 mg/kg)を腹腔内注射し、海馬損傷を誘発させた後、磁界ばく露(5.9 mTの50 Hz磁界に7時間/日、1週間)及び/またはCoQ10投与(10 mg/kg、2週間投与)した。モリス水迷路試験で学習及び空間記憶を評価した。ニッスル染色及びTUNELアッセイを用いて、海馬の組織病理学的分類も実施した。ウェスタンブロット技法で抗アポトーシス遺伝子を調べた。その結果、水迷路試験では、CoQ10投与、及びCoQ10投与と磁界ばく露の併用後、記憶の改善が認められた。ニッスル染色及びTUNELアッセイでは、CoQ10投与、及びCoQ10投与と磁界ばく露の併用後、ネクローシス[壊死]細胞及びアポトーシス細胞の数が減少した。ウェスタンブロットでは、CoQ10投与、及びCoQ10投与と磁界ばく露の併用による抗アポトーシス遺伝子の上方制御が認められた。磁界ばく露にはTMTで誘発させた海馬損傷の低減に対する有意な影響はなかった。これらの結果から、磁界にはCoQ10と比較してマウスの海馬に対する有意な神経保護作用はないが、磁界とCoQ10の併用は、CoQ10の神経保護作用を高め得ることが示された、と著者らは結論付けている。