超高圧直流(UHVDC)送電の急速な発展に伴い、UHVDC送電線の周辺環境中の静電界の強度が増加し、その潜在的な健康影響について公衆の関心が高まっている。この研究は、学習及び記憶能力に対する静電界ばく露の影響を調べるため、ICRマウスを56.3 kV/mの静電界に短期(7日間)または長期(49日間)ばく露し、モリス水迷路(MWM)試験での行動、海馬の神経伝達物質の含量、酸化ストレス指標を調べた。その結果、短期ばく露後は、MWM試験の脱出潜時が有意に長くなり、足場があった地点の通貨回数が減少し、足場があった象限での滞在時間も短縮した。また、セロトニンのレベル、ならびにγ-アミノ酪酸のレベルに対するグルタチオンのレベルの比率が有意に変化した。とりわけ、マロンジアルデヒド含量及びグルタチオンペルオキシダーゼ活性が有意に上昇し、スーパーオキシドジスムターゼ活性が有意に低下した。長期ばく露後は、全ての指標について、疑似ばく露群とばく露群との間に有意差は認められなかった。これらのデータは、56.3 kV/mの静電界への短期ばく露は、海馬における神経伝達物質のレベルの異常と酸化ストレスを生じ、これが学習及び記憶能力の低下につながるかも知れない、ということを示している。長期ばく露条件下では、静電界による神経伝達物質の含量及び酸化還元バランスの擾乱は、マウスの補償反応によって相殺され、学習及び記憶能力は正常なレベルに戻った。学習及び記憶能力の一時的で可逆的な低下は、静磁界による健康ハザードではなく、一般的な生物学的影響である、と著者らは結論付けている。
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