この研究は、精子形成への影響に関連して、miRNA発現の調節に対する超低周波電磁界(ELF-EMFs)ばく露の影響を調べた。マウス精母細胞由来GC-2細胞株に断続的に50HzのELF-EMF(磁界強度1mT、2mT、3mT)を72時間ばく露した(5分間ON、10分間OFF)。その結果、miR-26B-5がELF-EMFの異なる強度に応じて差別的に発現し、その時、GC-2細胞の宿主遺伝子CTDSP1はELF-EMFの異なる強度に応じて非メチル化状態であった;miR-26B-5Pの過剰発現はG0/G1期の細胞の割合を有意に減じ、S期の割合を若干増やした;miR-26b-5pの標的部位はCCND2であることが計算機アルゴリズムにより同定された、と報告している。
MicroRNAsは、コーディングされていないRNAsの小片であり、遺伝子の転写後発現調節に関与する。雄の生殖系への磁界の有害な影響可能性の作用メカニズムを探索するため、マウス精母細胞由来細胞株で実験した。
細胞を以下のグループに分けた:磁界ばく露レベルにより1) 1 mT、2) 2 mT、3) 3 mT。これらのグループそれぞれに擬似ばく露群を用意した。さらに、過剰発現または発現阻害を実験的に誘導するため、4) miR-26b-5p導入細胞 (100 nmol/l)、5) miR-26b-5p阻害剤添加(100 nM) でも実験した。これら2つのグループにはそれぞれネガティブコントロール群を用意した。最後に、6) miR-26b-5p導入し、その6時間後に 3 mT磁界ばく露、7) miR-26b-5p導入無し(ネガティブコントロール)で、6時間後に 3 mT磁界ばく露。6-7グループについては、それぞれの擬似ばく露群を用意した。
全てのデータは、2組で実施された独立的実験を少なくとも3回行って導き出された。
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | intermittent (5 min on/10 min off) for 72 h |
ばく露の発生源/構造 | |
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チャンバの詳細 | metal chamber in incubator |
ばく露装置の詳細 | exposure setup was composed of two four-coil systems (two coils with 56 windings and two coils with 50 windings) that generated a vertical MF inside a metal chamber; exposed and sham-exposed cell dishes were simultaneously placed in a separate incubator in which the environmental conditions were constant (37°C, 5% CO2); the temperature difference between sham exposure and exposure chamber never exceeded 0.3°C |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
Additional information | the system was composed of two identical chambers; one of the chambers was used for sham-exposure, the other chamber was used for exposure; exposed and sham-exposed cell dishes were simultaneously placed in an incubator |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1 mT | - | 測定値 | - | - |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | intermittent (5 min on/10 min off) for 72 h |
ばく露の発生源/構造 |
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Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 2 mT | - | 測定値 | - | - |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | intermittent (5 min on/10 min off) for 72 h |
ばく露の発生源/構造 |
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Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 3 mT | - | 測定値 | - | - |
MiR-26b-5pが、磁界ばく露に反応して最も差別的に発現したmicroRNAであった(他のmicroRNAsも見られたが詳細は分析されなかった)。 group 1 (1 mT)とその擬似ばく露群では、miR-26b-5p発現に差がなかったが、それぞれの擬似ばく露群に比べgroup 2 (2 mT)では有意な増加、group 3 (3 mT)では有意な減少が見られた。
miR-26b-5p宿主遺伝子のメチル化状態 には、ばく露と擬似ばく露で有意差がなかった。
実験的に誘導したmiR-26b-5pの過剰発現(group 4)または発現阻害(group 5)は、それぞれのネガティブコントロールと比べ、細胞生存力、アポトーシス、細胞周期を変化させなかった。
しかし、3 mT磁界ばく露と組合せた miR-26b-5p過剰発現 (group 6) は、この過剰発現無しでのばく露と比べ、細胞周期を有意に変化させた (group 7)。
ソフトウェア分析により、miR-26b-5pの標的としてcyclin D2が同定された。また RT-PCRおよびウェスタンブロット法により、 miR-26b-5pの過剰発現(group 4)、2 mT磁界ばく露 (group 2)、3 mT磁界ばく露 (group 3)および3 mT磁界ばく露と組合せた miR-26b-5p過剰発現 (group 6) において cyclin D2の mRNAおよびタンパク質の発現が有意に変化することが確認された。
著者らは結論として、「マウス精母細胞由来細胞株の50Hz磁界へのばく露は一部のmicroRNAの発現率を変化させ、miR-26b-5pがそのマーカとして 働く可能性のある。さらに、miR-26b-5p-cyclin D2介在性の細胞周期調節が、超低周波磁界ばく露の生物学的影響にある役割を果たすかも知れない」と述べている。
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