研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[kV/mおよび持続時間に依存して50Hz電界ばく露はBALB/cマウスのストレス誘発性グルココルチコイドレベルを低下させる] med./bio.

Exposure to 50 Hz electric fields reduces stress-induced glucocorticoid levels in BALB/c mice in a kV/m- and duration-dependent manner

掲載誌: Bioelectromagnetics 2015; 36 (4): 302-308

この研究は、BALB/cマウスの血漿中のグルココルチコイド(GC)レベルに対する50Hz電界(EF:2.5-200 kV/m)の60分間のばく露の影響を調べた。ばく露の後半30分間はマウスの体を固定した。ばく露終了後に採血して、GCを測定した。その結果、固定をしない場合、GCレベルに対するEFの影響は無かった;固定のよりGCレベルは上昇したが、EFにはその上昇を抑制する影響が観察された;固定によるGCレベル上昇の抑制は、0-10kV/mでは量依存的に強まり、10kV/mでGCレベル上昇は有意に小さくなり、50、200kV/mでのGCレベルは10kV/mより高かった;10kV/m のEFにてばく露期間(6、20、60分間)の影響を調べた別の実験では、20、60分間で固定によるGCレベル上昇が有意に抑制された、と報告している。

研究目的(著者による)

マウスでのストレス誘導性の血漿グルココルチコイド濃度に対する50 Hz電界ばく露の影響を調べること。

詳細情報

研究は、以下の3つの疑問を調べることを目的とした3つのパートに分かれている:a) 電界自体にストレスレベルへの影響があるのか?、b) 電界は、身体固定によるストレスレベルに影響するのか?c) ばく露時間はどのような影響を持つのか?。

それぞれのパートにおいて、マウスは以下の実験群に分けられた:a) (各群 n=5-6):ばく露した電界レベル 1) 10 kV/m、2) 150 kV/m、3) 擬似ばく露。b) (各群 n=5-6):身体固定ばく露した電界レベル 4) 2.5 kV/m、5) 5 kV/m、6) 10 kV/m、7) 50 kV/m、8) 200 kV/m、9) 身体固定での擬似ばく露、10) 擬似ばく露のみ。c) (各群 n=8):身体固定状態で10 kV/mの電界ばく露した時間 11) 6分間、12) 20分間、13) 60分間、14) 身体固定での擬似ばく露、 15) 擬似ばく露のみ。

パートc)以外では、ばく露時間は60分間であった。ばく露条件およびばく露時間に拘わらず全ての実験群において、動物は60分間、ばく露ケージ内に置かれた。固定は60分間の後半の時間で実施された。.

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 60 minutes
groups 1, 6 and 13
ばく露2: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 60 minutes
group 2
ばく露3: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 60 minutes
group 4
ばく露4: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 60 minutes
group 5
ばく露5: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 60 minutes
group 7
ばく露6: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 60 minutes
group 8
ばく露7: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 6 minutes
group 11
ばく露8: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 20 minutes
group 12

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 60 minutes
Additional information groups 1, 6 and 13
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • electrode
チャンバの詳細 cylindrical plastic cage (diameter: 200 mm, height: 100 mm) with slits (length: 100 mm, width: 5 mm) all around at intervals of 5 mm; alternative: 50 ml centrifuge tube during immobilization
ばく露装置の詳細 two stainless steel electrodes (1000 x 600 mm2) were placed over and under the cage or tube; an electrical current was applied to the upper electrode, whereas the lower electrode was grounded; electric fields had a margin of error of 1%; temperature within the cylindrical cage did not change during exposure
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 10 kV/m effective value 測定値 - -

ばく露2

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 60 minutes
Additional information group 2
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 150 kV/m effective value 測定値 - -

ばく露3

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 60 minutes
Additional information group 4
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 2.5 kV/m effective value 測定値 - -

ばく露4

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 60 minutes
Additional information group 5
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 5 kV/m effective value 測定値 - -

ばく露5

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 60 minutes
Additional information group 7
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 50 kV/m effective value 測定値 - -

ばく露6

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 60 minutes
Additional information group 8
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 200 kV/m effective value 測定値 - -

ばく露7

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 6 minutes
Additional information group 11
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 10 kV/m effective value 測定値 - -

ばく露8

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 20 minutes
Additional information group 12
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 10 kV/m effective value 測定値 - -

Reference articles

  • Hori T et al. (2012): [ジアシルグリセロール・アシルトランスフェラーゼのmRNA発現レベルおよびトリアシルグリセロール、遊離脂肪酸、リン脂質および総コレステロールの血漿濃度における50Hz電界の影響]
  • Harakawa S et al. (2008): [条件付けられた嫌悪応答における電界の影響]
  • Harakawa S et al. (2005): [ラットの血漿脂質過酸化レベル及び抗酸化活性に対する50Hz電界の影響]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

パート a) の結果として、電界単独ではグルココルチコイドレベルへの有意な影響はないことが示された。

パート b)では、無ばく露固定されたマウス(実験群 9)で、擬似ばく露マウスに比べ、グルココルチコイドレベルの有意な上昇が見られた。実験群9に比べ、 実験群4-6で、2.5 kV/m - 10 kV/mにおけるkV/m依存性のグルココルチコイドのレベル低下が見られた。ただし、結果に有意性があったのは実験群 6(10 kV/m)のみであった。

パート c)では、電界(10 kV/m)への20または60分間のばく露(実験群12、13)においてのみ、固定のみ(実験群14)に比べ、有意なグルココルチコイドのレベル低下が生じた。

著者らは、マウスの50 Hz電界へのばく露は、ストレス誘導性の血漿グルココルチコイドレベルをkV/mおよびばく露時間に依存的に変化させる可能性がある、と結論している。

研究の種別:

研究助成

関連論文