この研究は、がん患者のTリンパ球のインビトロでの表面付着能力の回復に必要な磁界ばく露レベルを調べた。研究の前提は、がん患者のTリンパ球のインビトロでの表面付着能力は対照のそれよりも低いことが知られていること、さらに、著者らは以前の研究で、磁界(50 Hz / 0.01-10 mT)へのばく露により、喉頭/咽頭がん患者のTリンパ球のインビトロでの表面付着能力が高まり、ほぼ生理学的な値が達成されたと報告したことを踏まえている。今回の実験には、20人のがん患者のサブセットを用いた。その結果、がん患者のTリンパ球のインビトロでの表面付着能力には、0.01 mTばく露群と0.05 mTばく露群の間、および0.01 mTばく露群と0.1 mTばく露群の間の両方で、有意差があった;対照群(慢性感音難聴と診断された患者のTリンパ球)でも、0.01 mTばく露群と0.05 mTばく露群の間に有意差があった;さらに、それぞれ0.5、0.1、および0.05 mTとの比較では1および10mTの磁界レベルにおいてようやく有意差が生じることが示されたことから、磁界レベルが低いほど、生物学的に有意性の高い応答が得られると結論される、と報告している。
がん患者ではTリンパ球の接着力が低下していることが知られている。細胞の接着能力の回復は、がんの治療に有益かも知れない。
本研究は2つのパートで実施した。パート1では、2000-2008年に喉頭/咽頭扁平上皮がんの患者から合計265個の血液サンプルを採取し、これを分析した。血液サンプルを以下のグループに分けた:1) 0.05mT磁界ばく露(n=30)、2) 0.1mT(n=30)、3) 0.5mT(n=76)、4) 1mT(n=60)、5) 10mT(n=69)、6) 非ばく露(n=?)。加えて、ボランティア316人の血液サンプルを対照群として調べた。
パート2では、パート1での時間のファクターの可能性を排除するため、パート1のがん患者の一部から採取した更なる血液サンプルを同時に分析した。これらのサブグループにおいて以下のグループを調べた:7) 0.01mT磁界ばく露(n=20)、8) 0.05mT(n=20)、9) 0.1mT(n=20)、10) 非ばく露(n=?)。慢性感覚神経性難聴の患者30人の血液サンプルを対照群に用いた。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 45 min
|
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ばく露2:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 45 min
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ばく露3:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 45 min
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ばく露4:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 45 min
|
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ばく露5:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 45 min
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ばく露6:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 45 min
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 45 min |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 33 cm high cylindrical coil with a diameter of 30 cm; test tubes placed at the center of the coil; the temperature during the experiment was 37°C; the non-homogeneity of the field within the test tube was in the vicinity of 1 % |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.01 mT | - | - | - | - |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 45 min |
ばく露の発生源/構造 |
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測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.05 mT | - | - | - | - |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
|
波形 |
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ばく露時間 | continuous for 45 min |
ばく露の発生源/構造 |
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測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.1 mT | - | - | - | - |
周波数 | 50 Hz |
---|---|
タイプ |
|
波形 |
|
ばく露時間 | continuous for 45 min |
ばく露の発生源/構造 |
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測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.5 mT | - | - | - | - |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
|
波形 |
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ばく露時間 | continuous for 45 min |
ばく露の発生源/構造 |
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測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1 mT | - | - | - | - |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 45 min |
ばく露の発生源/構造 |
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測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 10 mT | - | - | - | - |
パート1では、グループ4及び5(1及び10mT)と比較して、非特異的抗原の添加後のグループ1-3(0.05-0.5mT)に、Tリンパ球の接着能力の有意な増加が検出できた。同様に、腫瘍特異的抗原の添加後、グループ5と比較して、グループ1-3に有意な増加が見られた。全てのばく露群は、非ばく露細胞と比較して、接着能力の有意な増加を示した。
パート2では、両方の抗原の添加後、グループ9(0.1mT)と比較して、グループ7及び8(0.01及び0.05mT)に、接着能力の有意な増加が見られた。両方の抗原添加後、全てのばく露群(7-9)は、非ばく露細胞と比較して、接着能力の有意な上昇を示した。
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