この研究は、著者らの研究グループが1980年代後半から報告している、携帯電話から放出されるタイプのパルス変調高周波電磁界(RF-EMF)が血液脳関門に影響を及ぼすという知見の検証の一環として行われた。著者らの研究において、動物のばく露にはTEMセルが用いられ、このセルは外付け型電気ファンによって換気されていた。そこで今回は、電気ファンからの超低周波(ELF)磁界(50 Hz)がRF効果に追加的な効果を示すか否かを調べた。64匹のラットを4群に分けた。すなわち、RF単独ばく露群、ELF単独ばく露群、RF + ELFばく露群および擬似ばく露群である。TEMセル内での50 Hz磁界分布は、0.1 - 1.9 μTであったので、この範囲のいくつかの磁束密度をばく露実験に用いた。GSM-900 MHz RFばく露は、従来通り、非常に低く、非熱的で、全身平均SARレベル0.4 mW / kgであった。いずれのタイプのばく露も、ばく露時間は先行研究と同じ2時間とした。脳組織でのアルブミンの血管外漏出を観察するために、著者らが従来から使用している染料の他に、サードサプライヤーから入手したアビジン、ビオチン、抗体も使用したが、後者では許容できる染色はできなかった、と述べている。結果として、擬似ばく露群でアルブミン漏出は観察されなかった;RF単独ばく露群では、25 %の動物に病理学的アルブミン漏出が観察された;ELF単独ばく露群、RF + ELFばく露群ではそれぞれ3つおよび2つの病理学的所見があったものの、擬似ばく露対照群との有意差はなかった;総括すると、外付け型電気ファンの使用は従来からの研究知見に大きな影響を与えないことが示された、と報告している。
ラットの血液脳関門の透過性に対する無線周波の影響に、先行研究でTEMセルの換気用に用いた外部ファンからの超低周波磁界(50Hz、0.3-1.5T)が、加わっていたかどうかを調べること(「関連文献」のSalford他、Nittby他、及びEberhardt他を参照)。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
900 MHz
ばく露時間:
continuous for 2 h
RF exposure only
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|
ばく露2:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 2 h
ELF exposure only
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|
ばく露3:
900 MHz
ばく露時間:
continuous for 2 h
combination of RF and ELF exposure
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- |
rats were treated in four groups: i) sham exposure ii) RF exposure iii) ELF exposure iv) RF exposure + ELF exposure
周波数 | 900 MHz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 2 h |
Additional information | RF exposure only |
ばく露の発生源/構造 |
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チャンバの詳細 | TEM cells as exposure chambers |
ばく露装置の詳細 | mobile phone connected via a coaxial cable to the TEM cells; through power splitter the mobile phone's output power was divided into equal parts fed into the two TEM cells used; TEM cell enclosed in a 15 cm x 15 cm x 15 cm (inner dimensions) wooden box that supported the outer conductor, made of brass net and a central conducting plate which separated the top and bottom of the outer conductor symmetrically; each TEM cell contained two 14 cm x 14 cm x 7 cm plastic trays with a rat each; fan placed besides the TEM cell with the air flow directed 90° away from the cell; fan turned off |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | continuous for 2 h |
Additional information | ELF exposure only |
ばく露の発生源/構造 |
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ばく露装置の詳細 | mobile phone turned off: fan turned on |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1.7 µT | minimum | - | - | in the TEM cell closest to the fan |
磁束密度 | 1.9 µT | maximum | - | - | in the TEM cell closest to the fan |
磁束密度 | 0.5 µT | minimum | - | - | in the middle of the TEM |
磁束密度 | 0.8 µT | maximum | - | - | in the middle of the TEM |
磁束密度 | 0.1 µT | minimum | - | - | at the TEM cell wall opposing the fan |
磁束密度 | 0.3 µT | maximum | - | - | at the TEM cell wall opposing the fan |
ばく露の発生源/構造 |
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ばく露装置の詳細 | mobile phone turned on: fan turned on |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
No parameters are specified for this exposure.
偽ばく露群には、脳での病理学的なアルブミン漏えいはなかった。無線周波ばく露群では、漏えいが若干増加した(動物の25%)が、超低周波及び無線周波+超低周波ばく露群では、対照群との有意差はなかった。
著者らは、外部ファンの使用は、彼らが過去20年間にわたって積み上げてきた結果に大きな影響力を及ぼさなかった、と結論付けた。この知見は、特に非常に低いSARレベル(この場合はばく露限度推奨値2W/kgの1000分の1以下)での非熱的な無線周波ばく露後の血液脳関門の透過性の上昇に関する、著者らの先行研究と一致する。
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