この研究は、ヒトのβトレースタンパク質の血中濃度と携帯電話使用との関係を調べた。被験者は18歳から30歳までの62名。その結果、βトレースタンパク質の血中濃度は、携帯電話の使用年数(自己申告)が増えるにつれて減少し、負のβ係数=-0.32(95%信頼区間:-0.60~-0.04)であったと報告している。62名の被験者のうち40名で、890 MHz GSMの信号へ30分間ばく露実験を行った結果、統計的に有意なβトレースタンパク質の変化は見られなかった、と報告している。
ヒト血清ベータトレースタンパク質に対する携帯電話及びコードレス電話へのばく露の影響を調査した。
ベータトレースタンパク質はプロスタグランジンDシステムを通じて睡眠を制御しており、脳脊髄液中に高濃度で存在する。
890MHzのGSM信号に30分間ばく露された年齢18-30歳ののボランティア40人において、ベータトレースタンパク質の血中レベルを調査した(更なる詳細は、Söderqvist他、2009a 参照)。血液サンプルを4つ、病院到着時、30分間の休息後、ばく露の直後及びばく露終了の60分後に採取した。
更に、分析前のタンパク質の安定性を検査するため、ばく露群と同じインターバルで血液サンプルを採取した22人のボランティアにおいて、血清ベータトレースタンパク質のレベルを決定した。
加えて、参加者62人全員がワイヤレス電話使用についてのアンケートに回答した(Söderqvist他、2009b 参照)。
グループ | 説明 |
---|---|
集団 1 | 890MHzのGSM信号に30分間ばく露された群 |
集団 2 | 携帯電話及びDECT電話使用 |
集団 3 | 携帯電話使用 |
集団 4 | アナログ携帯電話使用 |
集団 5 | デジタル携帯電話使用 |
集団 6 | UMTS携帯電話使用 |
集団 7 | DECT電話使用 |
タイプ | 値 |
---|---|
合計 | 62 |
ばく露の前と比較して、890MHzのGSM信号に30分間ばく露された40人のボランティアの血液中のベータトレースタンパク質のレベルに、統計的に有意な変化は認められなかった。タンパク質の安定性を検査したボランティアには、時間経過に伴うベータトレースタンパク質のレベルの有意な上昇が認められたが、これは恐らくリラックスした状況によるものである。
アンケートの分析では、携帯電話及びコードレス電話の複合使用の年数に伴うベータトレースタンパク質の濃度低下が示された(ベータ係数-0.32、CI -0.60から-0.04)。ベータトレースタンパク質の濃度は、携帯電話及びコードレス電話の複合使用の累積時間数に伴って低下したが、統計的に有意ではなかった(ベータ係数-0.17;CI -0.41から0.07)。
著者らは、携帯電話及びコードレス電話へのばく露は、睡眠障害に関連しているかも知れないベータトレースタンパク質の合成を下方制御するかも知れない、と結論付けた。
携帯電話及びコードレス電話の使用はボランティアによる自己申告であったため、この結果は慎重に解釈しなければならない。実験研究におけるばく露条件に気付いていることが、ベータトレースタンパク質の濃度に影響力を及ぼしたかも知れない。
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