この研究は、ショ糖摂取が磁界(MF)ばく露による鎮痛作用を増強するか否かを調べた。元来、MFばく露およびショ糖摂取はどちらも、オピオイドを介した鎮痛作用を独立して引き起こす。疼痛閾値は、尾の引っ込め行動(テールフリック閾値:TF)、刺激中の発声(VD)および刺激後の発声(VA)に基づいて決定された。疼痛閾値の測定は、測定開始から0、5、10、15、30、45、60分の時点の7回のセッションで測定した(対照群)。次に、24時間の間隔をあけて、ラットにショ糖溶液を与え、10分間それを摂取させてから、7回の疼痛閾値測定を行なった(対照のショ糖摂取群)。その次に、ラットに磁界ばく露(50 Hz、17.9 μT)を8時間/日で7日間与えてから、7回の疼痛閾値測定を行なった(MFばく露群)。最後に24時間の間隔をあけて、ラットにショ糖溶液を与え、10分間それを摂取させてから、7回の疼痛閾値測定を行なった(MF +ショ糖摂取群)。その結果、疼痛の基礎閾値(セッション1(0分))には対照群とMFばく露群の間での差はなかった;セッション2 - 7での疼痛閾値は、対照群では変動しなかったが、MFばく露群では上昇し、対照群に比べて高くなった;対照のショ糖摂取群では、TFの閾値が上昇したが、MF +ショ糖摂取群では上昇しなかった;その一方、VAおよびVDの閾値は、MF +ショ糖摂取群に比べ、対照のショ糖摂取群において上昇した;これらの知見から、7日間のMFばく露は、痛みの基礎閾値に影響を及ぼさず、ストレス誘発性鎮痛作用を増加させ、ショ糖摂取誘発性鎮痛作用を減弱させたことが示唆される、と報告している。
磁界ばく露及びショ糖投与は共に、オピオイド介在性の無痛覚を独立して生じ得る。
雄ラット(n=6)を4つの実験条件で調べた:1) 偽ばく露(1-7日目)、2) 対照のショ糖投与(9日目)、3) 磁界ばく露(10-16日目)、4) 磁界ばく露+ショ糖投与(17日目)。7回のセッション(0、5、10、15、30、45、60分)での21回の不快な電気刺激により、侵害受容行動を調べた。
ばく露 | パラメータ |
---|---|
ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 8 h/day for 7 days
|
|
周波数 | 50 Hz |
---|---|
タイプ |
|
ばく露時間 | continuous for 8 h/day for 7 days |
ばく露の発生源/構造 | |
---|---|
ばく露装置の詳細 | two outer coils with 18 turns each, two inner coils with 8 turns each; 38 cm x 24 cm x 15 cm polypropylene cage placed in the center of the coils system |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
磁束密度 | 17.9 µT | effective value | - | - | - |
グループ1)vs.3):(0分での)痛みの基礎閾値は対照群と磁界ばく露群で変わらなかった。セッション2-7では、痛みの閾値は対照群では変わらなかったが、ばく露ラットでは上昇した。ばく露ラットの痛みの閾値は対照群よりも高くなった。
グループ2)vs.4):ショ糖投与対照群vs.磁界ばく露+ショ糖投与群では、対象ラットの尾の反応の閾値が上昇したが、ばく露群では上昇しなかった。刺激中及び刺激後の発声の閾値は、ばく露群よりも対照群で高くなった。
この結果は、7日間の磁界ばく露は痛みの基礎閾値に影響しないが、(不快な刺激の反復による)ストレスによる無痛覚を強めることを示唆している。磁界ばく露ラットのショ糖投与は無痛覚を強めず、ストレスによる無痛覚を減じた。慢性的な磁界ばく露下では、オピオイド介在性の行動が損なわれるかも知れない。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。