<目的>通常以上のレベルの低周波数電磁界に曝露される職業は、神経組織の変性が起こり、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの慢性の神経機能の病気のリスクが大きくなるとの仮説があり、多発性硬化症(MS)も同様に考えられている。この研究では、デンマーク全国の電力会社従業員について曝露の大きい職業とMSの罹病について調査を行い、一般人との罹病率の比較を行った。 <方法>デンマークでは多発性硬化症の登録(DMSR)が1948年から行われており、22の研究機関と二つのリハビリセンターを繋げて、過去遡及的に1948年から1993年までの31,990人の全国99の会社の従業員(少なくとも3ヶ月在籍者)の発症について調査が行われた。がんの罹病の調査と同じ手法で、25の職種名と19の職場の中で職業-曝露マトリックスが作られ、電磁界への曝露が評価され、また各人の健康調査が行われた。 <結果>総数31,990人(男26,124 女5,866)の中は約526,000人年、平均16.5年の追跡が含まれた。全体として32名の症例が観察され、一般人口の罹病率から割り出された期待数は23.7であり、ここから電力従業員として有意ではないSIR 1.35(95%CI 0.92-1.91)(男1.2 女1.7)が計算された(表2)。そして最初の雇用時からの時間とMS罹病までの時間、或いは電力での雇用期間とMS罹病については何かの傾向は見られなかった(表3)。極度の電磁界曝露を受ける職業の従業員ではMSのリスクはより高かったが、その増加は有意ではなかった(表3)。情報として、32名の症例の中で高い曝露カテゴリーに属する全ての従業員4名は全てケーブル繋ぎ工であった。
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