この研究は、第5世代(5G)携帯電話の電磁放射へのばく露が脳に及ぼす影響を調べた。雄ラットを全身平均比吸収率(WBSAR)が2.06 W/kgの2650 MHz電磁放射に4時間/日、28日間連続ばく露した。マウスの行動を、オープンフィールド(OFT)、高架十字迷路(EPM)および尾懸垂(TST)の各試験で評価した。モリス水迷路(MWM)、ヘマトキシリン‐エオシン(HE)染色およびTUNEL染色を用いて、空間記憶能力および海馬歯状回細胞の病理学的形態を評価した。更に、海馬における脳由来神経栄養因子(BDNF)、ガンマアミノ酪酸(GABA)、グルココルチコイド(GR)の発現レベルをウェスタンブロッティングおよび免疫組織化学で検出し、血清中のコルチコステロン(CORT)レベルを酵素結合免疫吸着法(ELISA)で検出した。その結果、OFTでは、総移動距離、中心移動距離、滞留時間がばく露群で有意に減少した(p < 0.05)。EPMでは、ばく露群では開放部での滞在回数および滞在時間の割合が有意に減少した。但し、TSTでは、ばく露群と対照群の 4分間の不動時間に有意差は認められなかった。MWMでは、ばく露群の逃避潜時は対照群よりも短く、有意差は認められなかった。更に、血清中のCORTレベルはばく露群で有意に増加した(p < 0.05)。一方、海馬におけるBDNFおよびGRタンパク質の発現は減少したが(p < 0.05)、GABA発現には有意差は認められなかった。これらの結果は、2650 MHz電磁放射(WBSAR 2.06 W/kg、4時間/日、28 日間) へのばく露はマウスの空間記憶能力に有意な影響を及ぼさなかいことを示してる。このばく露はマウスの不安様行動と関連している可能性があるが、マウスのうつ病様行動とは関連していない、と著者らは結論付けている。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。