この研究は、精巣に対する短期的な高周波(RF)電磁放射ばく露の直接的な生物学的影響を調べるため、2605 MHz RF(比吸収率(SAR)1.05 W/kg)に対する陰嚢露出ラットモデルおよび抽出した初代セルトリ細胞を用いた。その結果、短期的なRFばく露は精子の質および精子形成を低下させなかったが、セルトリ細胞での精巣テストステロンおよび亜鉛トランスポーター9(ZIP9)のレベルを上昇させた。イン・ビトロでは、RFばく露はセルトリ細胞のアポトーシス率を上昇させなかったが、過酸化水素(H2O2)にばく露したセルトリ細胞のアポトーシス率およびマロンジアルデヒド(MDA)を上昇させた。テストステロンはこれらの変化を逆転させ、セルトリ細胞のZIP9レベルを上昇させたが、ZIP9発言を阻害すると、テストステロンが介在するこれらの防護効果が有意に抑制された。更に、テストステロンはセルトリ細胞のリン酸化イノシトール要求性酵素 1(P-IRE1)、リン酸化タンパク質キナーゼR(PKR)様小胞体キナーゼ(P-PERK)、リン酸化真核生物開始因子2a(P-eIF2a)およびリン酸化活性転写因子6(P-ATF6)のレベルを上昇させ、これらの影響はZIP9阻害によって反転した。長期間のばく露では、精巣のZIP9は徐々に下方制御され、精巣MDAが上昇した。ばく露ラットの精巣ではZIP9レベルとMDAレベルとの負の相関が認められた。よって、短期的なばく露では、2605 MHz RF(SAR 1.05 W/kg)は精子形成を有意に阻害しないが、セルトリ細胞が外的な損傷に抵抗する能力を抑制し、これはZIP9が中心となるアンドロゲン経路の強化によって短期間で回復する。小胞体ストレス応答の増加が、これに関与する重要な下流のメカニズムかもしれない、と著者らは結論付けている。
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