この研究は、非電離の高周波(RF)電磁界へのばく露が適応応答(adaptive response)を生じうるかどうかを判定し、また、RFによる適応応答がトリガとなる潜在的分子メカニズムを解明することを目的として実施された。成体のスイスアルビノマウス24匹(平均体重37 g)を6匹ずつ4群に割り付け、RFばく露群(R)および適応応答群(RB)を組織1 g平均の比吸収率(SAR)が0.339 W/kgの900 MHz GSM信号に4時間/日、7日間ばく露し、対照群(C)および[がん治療薬の一種の]ブレオマイシン投与群(B)はばく露しなかった。最後のRFばく露の20分後、B群およびRB群のマウスにブレオマイシン37.5 mg/kgを腹腔内注射し、その30分後に安楽死させ、血液サンプルで酸化損傷および抗酸化メカニズムを調べた。肝組織でDNA修復に関与する遺伝子の発現における変化を検出した。肝組織中のDNA断片化によって生じたアポトーシスを、末端転移酵素-dUTP-ニック末端標識(TUNEL)アッセイで判定した。適応応答を生じたRB群を対照群と比較した。その結果、RB群における活性酸素種(ROS)の増加が、適応応答の発動および必要とされる最小限のストレスレベルの発生において重要な役割を果たしていたかもしれないことが示された。更に、DNA修復メカニズムの遺伝子発現を担う腫瘍抑制因子53(p53)、オキソグアニン DNA グリコシラーゼ(OGG-1)レベルが、ROSの上昇と共に上昇した。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP-1)、およびグルタチオンペルオキシダーゼ1(GPx-1)の遺伝子発現における変化は統計的に有意ではなかった。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)の抗酸化酵素レベル、および総抗酸化能(TAC)はAR群で低下した。TUNELアッセイの結果によれば、RB群でのアポトーシスは細胞死の減少によって低下し、これはDNA修復メカニズムを担う遺伝子発現の増加の結果かもしれない。これらの結果は、RFばく露はブレオマイシンに対する防護的応答を生じるかもしれないことを示している。RFばく露による最小限の酸化ストレスは、DNA修復メカニズムおよび酵素において役割を担う遺伝子の適応応答につながり、細胞の生存を可能にする、と著者らは結論付けている。
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