この研究は、20-ヒドロキシエクジソン(20E)が成体ラットの海馬の神経幹細胞(NSC)の運命を調節する因子として作用するかどうか、また、20Eが高出力マイクロ波放射によって生じさせた学習および記憶障害を緩和するかどうかを調べた。雄のSprague-Dawleyラット60匹を、対照群、マイクロ波ばく露群、マイクロ波ばく露+20E投与群に無作為に割り付けた。マイクロ波ばく露群、およびマイクロ波ばく露+20E投与群は、マイクロ波照射装置からの高出力マイクロ波にばく露した。学習および記憶能力をモリス水迷路試験で評価した。海馬の初代NSCをイン・ビトロで単離・培養し、増殖および分化を評価した。また、ヘマトキシリン・エオシン染色、ウェスタンブロッティング、免疫蛍光を用いて、ばく露後のラットの脳、ならびに海馬NSCでの増殖および分化における変化を検出した。その結果、20EはWnt3a/β-cateninシグナル伝達経路を介してばく露群のラットの海馬NSCの神経分化を生じること、20Eはばく露後の脳の亜粒帯での神経新生を促進することが示された。20E投与はばく露による学習および記憶障害を緩和し、Frizzled関連タンパク質(FRZB)が20Eによるβ-カテニンの核転座を減少させた。他方、FRZB投与は20EによるNSCの神経分化を逆転させた。これらの結果は、20Eが成体ラットの海馬NSCの運命を調節する因子であり、高出力マイクロ波による学習および記憶障害を緩和する役割を担っていることを示唆している、と著者らは結論付けている。
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