この研究は、モバイル通信デバイスに用いられる900 MHz高周波(RF)電磁界へのマウス骨髄間質細胞(BMSC)のばく露が、ミトコンドリア小胞体ストレス応答(UPRmt)を生じ得るかどうかを調べた。BMSCを120 μW/cm^2の900 MHzの連続波RFに4時間/日、5日間連続でばく露または擬似ばく露した。陽性対照群には6 Gyのエックス線を線量率1.103 Gy/minで照射した。UPRmtの上流分子JNK2[Jun-N末端キナーゼ2:リン酸化酵素の一つで、増殖、分化、転写制御、発生等の細胞内プロセスに関与する]を阻害するため、siRNA[低干渉RNA]+RFばく露群およびsiRNA+エックス線照射群の細胞を、ばく露/照射の48時間前に100 nMのsiRNA-JNK2で処理した。ばく露/照射の30分後、4時間後、24時間後に細胞を採集し、ROS[活性酸素種]のレベルをフローサイトメトリー法で測定し、UPRmt関連タンパク質の発現レベルをウェスタンブロット分析で検出した。その結果、擬似ばく露群と比較して、RFばく露群およびエッスス線照射群では、ばく露/照射の30分後および4時間後にROSレベルの有意な上昇が認められたが、24時間後にはこのレベル上昇は逆転した。ばく露群/照射群では、ばく露/照射の30分後および4時間後にHSP[熱ショックタンパク質]10/HSP60/ClpP[ガゼイン分解性ペプチターゼ]タンパク質の発現レベルが有意に上昇した(P < 0.05)が、RFばく露群では24時間後にこれらのレベルは逆転した。siRNA-JNK2での阻害後のばく露群/照射群では、HSP10/HSP60/ClpPのレベル上昇は生じなかった。これらの結果から、電力密度120 μW/cm^2の900 MHz RFばく露はBMSC細胞においてROSレベルを上昇させ、UPRmtの一時的な活性化を生じ得るが、タンパク質の折り畳み能力の意味ではミトコンドリアの恒常性はRFばく露の24時間後に回復し、この実験条件のRFばく露ではミトコンドリアの恒常的で重篤な機能不全は生じない、と著者らは結論付けている。
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