電磁パルス(EMP)は中枢神経系の損傷を生じ得るが、その根底にあるメカニズムは不明である。この研究は、ラットの脳皮質に対するEMPばく露の影響、ならびに脳由来神経栄養因子(BDNF)‐チロシン受容体キナーゼB(TrkB)シグナル伝達経路の欠陥の関与を調べた。ラットをEMPに1回/日、7日間連続でばく露し、ヘマトキシリン‐エオシン染色で病理組織学的損傷を評価した。シナプスマーカーのシナプス後密度タンパク質-95(PSD95)及びシナプトフィシン(SYN)、ならびにメチル-CpG-結合タンパク質2(Mecp2)のレベルをウェスタンブロットで判定した。炎症性サイトカインのインターロイキン-8及び抗炎症因子のインターロイキン-10を酵素結合免疫吸着法(ELISA)で評価した。更に、BDNF-TrkBシグナル伝達経路を調べるため、BDNF、pTrkB及びTrkBのタンパク質及びリン酸化タンパク質のレベルを判定した。その結果、EMPばく露は組織病理学的損傷、シナプスタンパク質SPD95の喪失、Mecp2の過剰発現及び炎症性応答につながることが示された。更に、BDNF-TrkB経路はEMPばく露によって下方制御された。TrkB作動薬の7,8-ジヒドロキシフラボンは、Mecp2の過剰発現を除いて、全てのEMPによる変化を防止した。これらの結果は、EMPばく露はラットの脳皮質の損傷を生じ得ること、及び、BDNF-TrkBシグナル伝達経路の欠陥がEMP関連の損傷に重要な役割を担っていることを示唆している、と著者らは結論付けている。
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