【目的】認知に関する電磁界の長期ばく露の研究はない。そこで、ディジタル携帯電話の頻繁な使用と高齢者の認知の変化(世界共通の変化とわが国特有の変化)の関連性を調べた。高齢者は年齢相応の認知の低下を経験している脆弱な集団であると考えた。【方法】シンガポール加齢長期追跡調査のコホートにおける871人の認知症ではない参加者について、ベースライン時点のディジタル携帯電話の使用・神経認知成績・交絡変数、4年のフォローアップ時点の神経認知成績を調査した。【結果】携帯電話使用者は典型的には自主的選択をする人であり、認知機能をよく働かせるのに好都合な性格を持ち、それに付随して認知タスクも良い成績を示した。【結論】高齢者の認知機能に対して、ディジタル携帯電話の使用の有害な影響がないことは明らかであった。他方、今回の知見は、ディジタル携帯電話の使用が、世界共通の実務遂行上の機能に対して独自の促進的影響を持つかもしれないことを示した。
認知機能はミニメンタルステート検査により、ベースライン及びフォローアップの時点で評価した。全スコアの範囲は0-30で、スコアが高いほど認知パフォーマンスがより高いことを示す。臨床的に有意なレベルの認知低下は、ベースラインとフォローアップでの2点以上の低下によって判定した。更なる神経心理検査を用いて、集中力及び作業記憶(ディジットスパン検査、空間スパン検査)、記憶機能(聴覚言語学習検査、視覚再生検査)、実効機能(カテゴリー別言語流暢検査、デザイン流暢検査)を評価した。
グループ | 説明 |
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参照集団 1 | 携帯電話使用:使用経験なし、または稀に使用( < 1回/週) |
集団 2 | 携帯電話使用:時々使用( ≥ 1回/週、但し毎日ではない) |
集団 3 | 携帯電話使用:しばしば使用(毎日) |
タイプ | 値 |
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参加者 | 871 |
参加者の43.6%がデジタル携帯電話の使用なし、またはほとんどなし、25.5%が時々使用、30.9%が日常的に(「しばしば」)使用と報告した。本研究では、デジタル携帯電話ユーザーは有意により若く、男性で、学歴が高く、身体的、社会的及び生産的により活動的で、より良い認知機能に関連した特徴があった。
交絡因子について調整後の高齢者の認知機能に対するデジタル携帯電話使用の悪影響の証拠は明らかになかった。この知見は、デジタル携帯電話使用には全体的な認知パフォーマンス及び実行機能(例:計画、組織化)に良い影響があるかも知れないことを示唆している。
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