この研究は、著者らの先行研究で、50 Hzの磁界(MF)がマウス皮膚での紫外線(UV)誘発性腫瘍形成を促進するという知見が得られたのを受けて、皮膚腫瘍形成に対するMFの促進効果のメカニズムの候補としてアポトーシスの抑制について調べた。そのほかに、UVとMFのばく露スケジュールの重要性、特にUV照射前のMFばく露の役割を調べた。雌マウスの3つのばく露群は、50 Hz MF(100 μT)、UV(2ヒトMED(Minimal Erythema Dose:最小紅斑線量:照射後24 時間以内にわずかな皮膚の赤みを引き起こすのに必要な線量))のばく露を以下の3通りのスケジュールで受けた。第1群は、MF擬似ばく露24時間、UV ばく露1時間、MF擬似ばく露24時間。第2群は、MF擬似ばく露24時間、UV ばく露1時間、MFばく露24時間。第3群は、MFばく露24時間、UV ばく露1時間、MFばく露24時間。UV照射にはシミュレート太陽放射(SSR)ランプを用いた。皮膚サンプルで、アポトーシス、p53遺伝子の発現、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の活性、およびポリアミン濃度を分析した。その結果、第2群では、第1群に比べ、アポトーシス細胞の数が有意に少なかった;第3群でも同様にアポトーシス細胞の数が少なかったが、有意ではなかった;3つの群のいずれでもp53発現は検出されなかった;ODCおよびプトレシンのレベルには、UV単独ばく露群(第1群)とUVおよびMFのばく露を受けた2つの群の間で有意差はなかった;スペルミジンおよびスペルミンレベルは、第1群に比べ、第3群で有意に低かったが、第2群では低下が観察されなかった;総括すると、SSRがマウス皮膚にp53非依存性アポトーシスを誘導すること、そのようなアポトーシス反応はMFばく露により阻害される可能性があること、UVとMFのばく露スケジュールはMFの影響を変えないことが示され、アポトーシスに対するMFの作用においてポリアミンが作因となるという仮説は支持されなかった、と報告している。
マウスを4群(各n=8)に分けた:1) 偽ばく露24時間、紫外線(UV)照射1時間、磁界ばく露(MF)24時間;2) 磁界ばく露24時間、UV照射1時間、磁界ばく露24時間;3) 偽ばく露24時間、UV照射1時間、偽ばく露24時間;4) 非ばく露対照。
1時間のUV照射量は400J/m2。
p53タンパク質発現についての試験では、既知のp53陽性皮膚腫瘍サンプルを陽性対照に用いた。一次抗体なしで処理したサンプルを陰性対照に用いた。
ultraviolet radiation was done using lamps that simulated the solar spectrum; mouse dorsal hair was clipped 1 day before ultraviolet radiation
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | continuous for 24 h (group 1) or 2 times for 24 h (group 2) |
ばく露の発生源/構造 |
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Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
Additional information | during clipping, a magnetic flux density of 5 µT was measured immediately below the clipper; 50 Hz background magnetic field was less than 0.05 µT |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 100 µT | - | - | - | - |
対照群と比較して、全てのばく露群(グループ1-3)でアポトーシスが増加し、グループ3(偽ばく露+UV+偽ばく露)で最も高かった。グループ1(偽ばく露+UV+MF)ではグループ3と比較して、アポトーシスの有意な減少が示された。グループ2(MF+UV+MF)でもグループ3と比較してアポトーシスの減少が示されたが、有意ではなかった。
どのグループでもp53のタンパク質発現は検出されなかった。
ばく露群間でオルニチンデカルボキシラーゼ酵素活性に有意差は見られなかった。
ポリアミドのレベルでは、グループ3(偽ばく露+UV+偽ばく露)と比較して、グループ2(MF+UV+MF)でスペルミジン及びスペルミンに有意な低下が見られた。
著者らは、マウスの紫外線ばく露は皮膚にp53非依存性のアポトーシスを生じるかも知れず、また、磁界ばく露はこの影響を減じ得る、と結論付けている。
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