この研究は、電磁界(EMF)への職業ばく露とブドウ膜メラノーマのリスクの関連について、欧州9ヶ国で症例対照研究を実施した。ブドウ膜メラノーマ症例293人とその対照3198人(人口対照または院内対照。国、5年間の出生コホート、性別について度数マッチングさせた)。対象者の就労経験を調査(高圧送電施設、コンピュータ画面、電気機器の周辺や複雑な電気的環境内での労働)とスカンジナビア職業-ばく露マトリックスに基づき生涯累積EMFばく露量を推定した。性別と目の色(暗色と明色)で層化、潜在的交絡因子を調整して、条件なしロジスティック回帰分析を行った。その結果、送電施設へのばく露があった女性でリスク上昇が見られた(OR= 5.81、95% 信頼区間1.72~19.66);男女共、制御室へのばく露とのポジティブな関連が見られたが、リスク上昇が最大になったのは目の色が暗色の人に限られた;生涯累積ばく露推定値で見た場合、男性より女性の方がリスク上昇が大きく、それは目の色が暗色の人に限られた、などを報告している。
電磁界へのばく露は職歴についてのアンケートで評価した。生涯の累積の磁界強度は、スカンジナビアの職業-ばく露マトリクスに基づいて各々の職業と期間を合計した。
男女別、ならびに瞳の色別にデータを分析した。これは、黒い瞳は一般にぶどう膜メラノーマに対して防護的であると考えられているためである。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 個々の電磁界発生源に非ばく露 |
集団 2 | 送電設備へのばく露(グループ3及び4を含む) |
集団 3 | 変圧器及び変電所 |
集団 4 | 架空高圧電力線 |
集団 5 | 電気機械へのばく露(グループ6及び10を含む) |
集団 6 | 工作機械 |
集団 7 | オーブンまたは窯 |
集団 8 | リフティングトラック |
集団 9 | その他の電気機械 |
集団 10 | 溶接装置 |
集団 11 | 複雑な電子機器のある部屋でのばく露(グループ12及び15を含む) |
集団 12 | コンピュータ室 |
集団 13 | 制御室またはコンピュータ室 |
集団 14 | 電話交換機 |
集団 15 | 複雑な医療機器のある部屋 |
集団 16 | コンピュータ画面へのばく露 |
集団 17 | レーダーユニットへのばく露 |
集団 18 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 5thパーセンタイル |
集団 19 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 10thパーセンタイル |
集団 20 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 20thパーセンタイル |
集団 21 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 30thパーセンタイル |
集団 22 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 40thパーセンタイル |
集団 23 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 50thパーセンタイル |
集団 24 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 60thパーセンタイル |
集団 25 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 70thパーセンタイル |
集団 26 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 80thパーセンタイル |
集団 27 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 90thパーセンタイル |
集団 28 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 95thパーセンタイル |
集団 29 | 累積磁界ばく露(µT‐年): ≥ 97thパーセンタイル |
症例 | 対照 | |
---|---|---|
適格者 | 323 | 3,372 |
参加者 | 293 | 3,198 |
送電設備にばく露された女性には、ぶどう膜メラノーマのリスク上昇が認められた(OR 5.8;CI 1.72-19.66)。複雑な電気環境へのばく露についてリスク上昇が認められた。瞳の色が濃い女性では、瞳の色が薄い女性と比較して、より強いリスク上昇が認められた。
著者らは、電磁界への職業ばく露は、特に瞳の色が濃い女性においてぶどう膜メラノーマのリスクを高めるかも知れない、と結論付けている。
この知見は、特に女性について少ない数に基づいているため、細心の注意を払って解釈すべきである。
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