この横断調査は、血液脳脊髄液関門に対する携帯電話・コードレス電話使用の影響を調べるために、1000人(男女各500人、年齢18-65歳)を対象に、無線電話使用に関する質問紙への回答と血液サンプルの提供を求めた。参加率は31.4%であった。血液脳脊髄液関門に影響があれば当然変化が起きると考えられる血清中トランスチレチン(TTR)濃度を指標とした(カットポイント0.31 g/lで高TTR群と参照群に二分した)。その結果、携帯電話とDECT電話を統合した使用開始からの期間(電話の種類毎の使用期間は考慮していない)と高TTRは統計的に有意に関連したこと、短期使用に関しては、採血当日の採血前の最後の電話使用と採血との間隔が短い人ほどTTR濃度が顕著に高いことが女性で見られたと報告している。
グループ | 説明 |
---|---|
集団 1 | 携帯電話及びDECT電話使用 |
集団 2 | 携帯電話使用 |
集団 3 | アナログ携帯電話使用 |
集団 4 | デジタル携帯電話使用 |
集団 5 | UMTS携帯電話使用 |
集団 6 | DECT電話使用 |
集団 7 | 携帯電話及びDECT電話の累積使用時間 |
集団 8 | 携帯電話及びDECT電話の最初の使用からの年数 |
集団 9 | 採血日の使用分数、携帯電話 |
集団 10 | 採血日の使用分数、DECT |
集団 11 | 最後の使用から採血までの分数、携帯電話及びDECT |
タイプ | 値 |
---|---|
合計 | 1,000 |
参加者 | 314 |
参加率 | 31 % |
携帯電話及びDECT電話使用についての血清トランスサイレチンのロジスティック回帰分析では、統計的に有意ではないオッズ比の上昇(OR 1.2、CI 0.6-2.4)が認められた。最初の使用からの期間についての線形回帰分析では、アナログ携帯電話または携帯電話とDECT電話の組合せを使用していた男性について有意な知見が認められたが、女性については認められなかった。短期的な使用に関しては、当日の最後の通話後に血液をより早く採取するほど、有意により高い血清トランスサイレチン濃度が女性に認められた。
本研究の制約は、参加率の低さと、アンケートによるばく露評価である。血清トランスサイレチンは栄養状態のマーカーなので、栄養失調が結果に交絡した可能性がある。理想的には、脳脊髄液中のトランスサイレチンのレベルを分析すべきであるが、それは倫理上の理由により不可能である。
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