この研究は、携帯電話基地局と悪性がんの発生率との間の関連の可能性を調べる目的で、ドイツのバイエルン州で実施された生態学的研究である。48の自治体を調査対象とした。観察期間は2002 – 2003年。各自治体の携帯電話基地局へのばく露は、基地局カバー範囲を代替指標として評価し、結果として自治体を次の3つに分類した。すなわち、1) 基地局カバー範囲外：全ての基地局から自治体区域までの距離が400m超、または基地局の運転期間が5年未満。2) 基地局カバー範囲内：運転期間が少なくとも8年の基地局からの距離が400m以内に自治体区域が少なくとも15%が入る、あるいは、運転期間が5-7年の基地局からの距離が400m以内に自治体区域が少なくとも30%入る。3) その他、である。バイエルン州の人口ベースのがん登録に基づき、白血病、脳腫瘍、乳がん、甲状腺腫瘍、その他の腫瘍の標準化発生率比(SIR)を自治体ごとに計算した。その結果、対象とした自治体全体で1116人の悪性腫瘍が登録されていた；基地局カバー範囲内の自治体で、がん発生率の上昇は認められなかった；基地局カバー範囲外の自治体では、がん発生率は大きく異なっていた；この研究の限界は、バイエルン州がん登録が地域全体のデータ収集を開始したのは2002年であるので、観察期間は最大で僅か2年間であったことである、と報告している。
携帯電話中継局へのばく露は、基地局カバー範囲を代用として評価し、自治体を3つに分類した：
1) 基地局カバー範囲なし：全ての基地局から自治体の区域までの距離が400m超、または基地局の運転期間が5年未満；
2) 基地局カバー範囲が中：運転期間が少なくとも8年で、近くの基地局からの距離が400m以内にある自治体の区域が少なくとも15%；あるいは、運転期間が5-7年で、近くの基地局からの距離が400m以内にある自治体の区域が少なくとも30%；
3) 基地局のカバー範囲が低：他のカテゴリーに割当てられない自治体
| グループ | 説明 |
|---|---|
| 参照集団 1 | 基地局のカバー範囲：なし |
| 集団 2 | 基地局のカバー範囲：低 |
| 集団 3 | 基地局のカバー範囲：中 |
| タイプ | 値 |
|---|---|
| 合計 | 177,428 |
242508 人‐年
観察した自治体で1116人の悪性腫瘍が登録された。
携帯電話中継局がある自治体で、がん発生率の上昇は認められなかった。携帯電話中継局がない区域では、がん発生率は大きく異なっていた。基地局と、放射線の影響に敏感であると考えられる種類の腫瘍の発生率との関連は認められなかった。
著者らは、携帯電話中継局がない町でがん発生率が大きく異なることが、基地局の周囲での局所的なクラスターについての報告を認めるものである、と結論付けた。
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