研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[ブラジルのミナスジェライス州ベロオリゾンテにおける新生物による死亡と携帯電話基地局] epidem.

Mortality by neoplasia and cellular telephone base stations in the Belo Horizonte municipality, Minas Gerais state, Brazil

掲載誌: Sci Total Environ 2011; 409 (19): 3649-3665

この研究は、1996年から2006年のブラジルのミナスジェライス州の州都ベロオリゾンテ市での携帯電話基地局(BS)設置の密度と新生物による死亡症例との間に空間的相関関係が存在するか否かを調べ、さらに、携帯電話の送信アンテナが集中している場所での公衆ばく露レベルを測定した。BSおよび新生物死亡症例に関する記述的な空間分析は、地理参照情報を用いて、生態学的疫学的アプローチにより実行された。使用したデータベースは、市保健局による新生物死亡症例記録、ブラジル無線通信局ANATELによるBS設置情報、ブラジル地理統計資料院が提供する国勢調査および人口統計データの3つであった。その結果、2006年12月までに設置されたBSは約856で、そのほとんど(39.60 %)は、市の中南部地域にあった;1996年から2006年の間に発生した新生物死亡症例は7191人であり、BSから500 mの範囲内での死亡率は10,000人あたり34.76人であった;この地域の外では、新生物による死亡者数はより少なかった;最大の累積発生率は中南部地域における1000人あたり5.83であり、最小の発生率はバレイロ地域での1000人あたり2.05であった;環境モニタリング中に累積的に測定された電界の最大は12.4 V / mであり、最小は0.4 V / mであった;電力密度の最大は40.78 μW / cm2、最小は0.04 μW / cm2であった、と報告している。

研究の目的(著者による)

携帯電話基地局の位置と1996-2006年の期間の新生物による死亡例との空間的相関があるブラジルにおいて生態学的研究を実施した。

詳細情報

死亡証明書に基づく、新生物による全ての死亡のうち、がんと非電離電磁放射とを結びつける文献(例えば、Eger他、2004;BioInitiative Report、2007)に基づいて、がんの種類のサブセットを選択した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (死亡率)

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 住所から基地局までの距離:0 - 100 m
集団 2 住所から基地局までの距離:0 - 200 m
集団 3 住所から基地局までの距離:0 - 300 m
集団 4 住所から基地局までの距離:0 - 400 m
集団 5 住所から基地局までの距離:0 - 500 m
集団 6 住所から基地局までの距離:0 - 600 m
集団 7 住所から基地局までの距離:0 - 700 m
集団 8 住所から基地局までの距離:0 - 800 m
集団 9 住所から基地局までの距離:0 - 900 m
集団 10 住所から基地局までの距離:0 - 1000 m
参照集団 11 住所から基地局までの距離: ≥ 1000 m

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 22,493
評価可能 7,191

結論(著者による)

22493人のがん死亡全体のうち、上述のクライテリアに従い、7191人のがん死亡が選択された。最も有意な原因は肺がん(19.6%)、胃がん(14.1%)、前立腺がん(12.6%)、乳がん(11.5%)であった。2008年の測定での電界強度平均値は7.32V/mで、0.4-12.4V/mの範囲で変化した。
100mまでの距離では、死亡の絶対数は3569人(全死亡の49.6%)、死亡率は1万人あたり43.4人で、ベロオリゾンテ全体での住民1万人あたり32.1人の死亡率に対する相対リスクは1.35であった。基地局から500m以内の住民について観察された死亡率は1万人あたり34.8人であった;基地局からより遠くに住む住民については、この比率は低下した。
著者らは、1996-2006年のベロオリゾンテにおける新生物による死亡例と携帯電話基地局の位置との間に空間的相関が存在する、と結論付けている。

研究の限界(著者による)

著者らは、この研究のデザインである「生態学的研究」では、食品、生活習慣、活動レベル、喫煙、自己投薬、個々の病理学、または遺伝的要因といった、個々人の特性を考慮することができないことに留意している。

研究助成

この論文に対するコメント

関連論文