この研究は、超低周波磁界(ELF MF)が、中枢のアルファ(2)アドレナリン受容体作動薬クロニジンによって誘発される睡眠に影響を与えるか否かを調べた。2日齢のヒヨコを用いて、クロニジンの用量に関連した睡眠時間増加効果および睡眠開始時間短縮効果を事前に確認し、実験の用いる用量の参考にした。実験の結果、ヒヨコにMFのばく露(磁束密度5、10、20 G;ばく露時間3、6、9、12時間)を与えると、MFの強度とばく露時間の一次関数として、クロニジン誘発による睡眠時間の有意な増加が見られた;クロニジンは脳内のノルアドレナリンまたはチロシンを減少させるが、MFばく露を受けた動物において、この減少効果に変化はなかった。次の実験として、ガンマアミノ酪酸A(GABA(A))/ベンゾジアゼピン(BZD)受容体システムが、中枢のアルファ(2)アドレナリン作動性システムの活性化により引き起こされるクロニジン誘発睡眠の短縮に関与しているか否かを判定するために、ヒヨコで、BZD受容体拮抗薬フルマゼニルとGABA(A)拮抗薬ビククリンのクロニジン誘発睡眠への影響を調べた。その結果、MFによるクロニジン誘発睡眠時間の増加を、ビククリンおよびフルマゼニルは抑制した;クロニジンまたはMFは、脳内のGABAレベルを変化させなかった;これらの知見から、2日齢のヒヨコの脳内のGABAまたはノルアドレナリンの濃度に関係なく、MFがGABA(A)およびBZD受容体システムの変化を介してクロニジン誘発睡眠を増加させる可能性が示唆された、と報告している。
クロニジン誘発性の睡眠に対する磁界の影響は、アルファ‐アドレナリン作動性受容体に関係しているかも知れない。アルファ‐アドレナリン作動性受容体は中枢神経系でのノルアドレナリンのシナプス前放出を阻害する。
2日齢のヒヨコにクロニジン(選択的アルファ‐アドレナリン作動性受容体作用薬)を投与し、ばく露した。加えて、クロニジン誘発性の睡眠にGABA/ベンゾジアゼピン受容体システムが関与しているかどうかを判定するため、クロニジン投与と磁界ばく露の有無の10分前に、それぞれの拮抗薬ビククリン(0.1mg/kg)またはフルマゼニル(0.5mg/kg)を注入した。
各群で8-10匹のヒヨコを用いた。
周波数 | 60 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | 3 h, 6 h, 9 h or 12 h |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 2 pairs of vertically oriented Helmholtz coils each consisting of 3 coils in a wooden frame |
クロニジンは、量に関連した睡眠時間の増加と入眠時間の減少を生じた。クロニジン誘発性の睡眠時間は、磁界ばく露の強度と時間と共に増加した。クロニジン誘発性の睡眠の入眠時間は磁界によって変化しなかった。
クロニジンは磁界ばく露とは独立に、脳内のノルアドレナリンまたはチロシンを低下させ、アルファ-アドレナリン作用性受容体が中枢神経系でのノルアドレナリンのシナプス前放出を阻害することを確認した。
ビククリンとフルマゼニルは、磁界によるクロニジン誘発性の睡眠時間の増加を阻害した。入眠時間はビククリンとフルマゼニルでの前処理後の磁界によって変化しなかった。クロニジン、磁界またはその両方の組合せは、脳内のGABAレベルを変化させなかった。
磁界はクロニジン誘発性の睡眠時間を増加させた。これらの影響は、ノルアドレナリン及びGABAシステムの両方に関連しているかも知れない。
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