[電磁界へのばく露による潜在的な健康影響:1 Hz-100 kHzの周波数に関する最新情報 - 最終意見書] info

Potential health effects of exposure to electromagnetic fields (EMF): Update with regard to frequencies between 1Hz and 100 kHz - final opinion

Scientific Committee on Health, Environmental and Emerging Risks (SCHEER)
2024: 1-44

欧州委員会(欧州連合(EU)の執行機関)に対する科学諮問機関の一つである「保健・環境・新興リスクについての科学委員会(SCHEER)」は、「電磁界ばく露の潜在的健康影響:1 Hzから100 kHzの間の周波数に関する最新情報」と題する最終意見書を発出した。この最終意見書の要旨は以下の通りである。

公表された文献レビューで報告されているように、欧州の一般公衆のばく露は、EU理事会勧告 1999/519/ECで推奨されているばく露制限値を下回っている。低周波電磁界ばく露に関連するメラトニン仮説ラジカルペアメカニズム、酸化ストレス、またはエピジェネティック効果に関する系統レビューおよびメタ分析はない。疫学研究およびイン・ビボ研究で観察された超低周波 (ELF) 磁界による健康リスクにおける相互作用メカニズム (酸化ストレス、遺伝的/エピジェネティック効果) の関与に関する証拠は弱い。
標準化されたばく露条件と最適化されたイン・ビトロ細胞株を活用し、低周波電磁界と生体物質との相互作用メカニズムを確立するには、代謝プロセスがヒトの健康に関連する生物学的反応の解釈に重要な役割を果たすイン・ビボモデルに外挿できる可能性のある、更なる研究が必要である。
SCHEERは、低周波電磁界ばく露と自己申告症状に関する最近の (2015年以降) 系統レビューおよびメタ分析を特定できず、今回の意見書で以前のSCENIHR意見書の評価を更新できなかった。SCENIHR意見書 (2015年) では、ELF磁界ばく露と自己申告症状因果関係を示す説得力のある証拠はないと結論付けられていることに留意されたい。
主に症例対照研究に基づく、白血病とELF磁界ばく露に関する公開された系統レビューでは、ELF磁界ばく露は一貫しているが中程度のリスク推定値を示していることが明らかになったが、ばく露量-反応曲線を確立するには証拠が少な過ぎた。小児白血病に関しては、疫学研究 (主要な証拠) からの証拠の重みは弱い~中程度である。但し、大多数の研究で用いられた動物モデルは小児白血病の研究には適していなかったため、この証拠からの証拠は弱い。更に、ELF磁界ばく露による腫瘍形成誘発に関する相互作用メカニズムからの証拠は弱い。従って、全体として、ELF磁界ばく露小児白血病との関連に関する証拠は弱い。
全体として、職業上の ELF電磁界ばく露筋萎縮性側索硬化症(ALS)との関連については中程度の証拠 (主にヒト研究から) があり、職業上のELF電磁界ばく露アルツハイマー病および認知症との関連については弱い証拠があるが、居住環境ばく露とこれらの神経変性疾患については不確かさから弱い証拠しかない。電磁界ばく露パーキンソン病または多発性硬化症との間には有意な関連は確立されていない。
ELF電磁界ばく露神経生理学的結果に関する系統レビューおよびメタ分析は確認できなかった。従って、潜在的な影響について明確な結論を導き出すことはまだ不可能である。
利用可能な系統レビューおよびメタ分析では、ELF電磁界ばく露妊娠または生殖結果との関連は示されていない。
中間周波(IF)電磁界ばく露健康への影響に関する証拠の重みは、様々な証拠からの矛盾した情報により不確かである。ヒトを対象とした研究に基づいて決定的な結果に達することもできない。
動物植物が環境中の人為的発生源に近い場合、ELF電磁界ばく露はヒトよりも高いレベルに達する可能性がある。更に、動物植物はヒトには存在しない受容体や構造を持っているため、種固有の生物学的影響が生じる可能性がある。

ばく露