この研究は、マイクロ波放射によるマウスの網膜の661W細胞[光受容細胞株]の損傷に対する、クロマメノキから抽出したアントシアニンの防護作用を調べた。661W細胞を対照群、マイクロ波ばく露群(30 mW/cm^2、1時間)、アントシアニン事前投与(25、50、100、200 µg/mL)+マイクロ波ばく露群の6群に割り付けた。処理後、細胞のアポトーシス指標(AI)をヘキスト染色で判定した。マロンジアルデヒド(MDA)およびグルタチオン(GSH)含量、ならびにスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を測定した。核因子赤芽球2関連因子2(Nrf2)およびヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)のmRNA発現をリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)で判定し、HO-1タンパク質の発現をウェスタンブロッティングで調べた。核と細胞質を分離し、Nrf2タンパク質発現をウェスタンブロッティングで更に検証した。その結果、各群間でAIに有意差が認められた。対照群と比較して、マイクロ波ばく露群ではAIが有意に高く、アントシアニン投与+マイクロ波ばく露の4群では低かった(P < 0.05)。線形回帰分析では、AIの低下はアントシアニン投与量に依存的であることが示された。アントシアニン投与+マイクロ波ばく露群の661W細胞のMDAおよびGSH含量は、マイクロ波ばく露群よりも有意に低かった(P < 0.05)。アントシアニン投与(50、100、200 µg/mL)+マイクロ波ばく露群のSOD活性は、マイクロ波ばく露群よりも有意に高かった(いずれもP < 0.05)。Nrf2およびHO-1 のmRNA発現はマイクロ波ばく露群では僅かに上昇し、アントシアニン投与(100 µg/mL)+マイクロ波ばく露群では明らかに上昇した。マイクロ波ばく露群では核のHO-1およびNrf2タンパク質の相対的発現は僅かに上昇し、細胞質での変化は明確ではなかったが、アントシアニン投与+マイクロ波ばく露群では核と細胞質のどちらでも有意に上昇した。クロマメノキから抽出したアントシアニンは、マウスの661W細胞のアポトーシスを減少させ、細胞膜を安定化させ、酸化的損傷を軽減し、そのメカニズムはNrf2/HO-1シグナル伝達経路の活性化、ならびにHO-1の転写と翻訳を通じたものである可能性がある、と著者らは結論付けている。
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