著者:
Colciago A, Audano M, Bonalume V, Melfi V, Mohamed T, Reid AJ, Faroni A, Greer PA, Mitro N, Magnaghi V
掲載誌: Cells 2021; 10 (7): 1840
難聴は最も一般的な感覚障害で、その共通原因の一つは前庭細胞の形質転換から生じる第8脳神経の良性腫瘍である前庭神経鞘腫の存在である。過去10年間、前庭神経鞘腫の発生率の増加が電磁界ばく露と相関していることから、この研究は、ヒトの前庭細胞の生物学的変化、および/または電磁界ばく露後の前庭細胞の発がん性形質転換の根底にある分子メカニズムを調べた。次世代シーケンシング(NGS)技術およびRNAシーケンストランスクリプトミック分析を通じて、急性[50 Hz、1 T、10分間の単回]および慢性[50 Hz、1 T、10分間/日、5日間]の電磁界ばく露後のゲノムプロファイルおよび難聴関連遺伝子の発現の差異を調べた。その結果、慢性的な電磁界ばく露は細胞増殖を変化させると共に、主に翻訳とミトコンドリア活性に関連する細胞内シグナル伝達および代謝経路を変化させることが示された。重要なことに、NEFL、TPRN、OTOGL、GJB2、RESTといった難聴関連遺伝子の発現は、慢性的な電磁界ばく露によって下方制御されるようであった。これらの結果から、電磁界ばく露は前庭神経鞘腫細胞の形質転換を促進し、難聴に寄与するかもしれないことが示唆される、と著者らは結論付けている。