高圧架空電力線から生じる電界および荷電イオンが成人のがんリスクとどのように関連し得るかを説明するため、様々なメカニズムの仮説が提唱されているが、これまで大規模な疫学研究での系統的な探索は実施されてこなかった。この研究は、英国のイングランドおよびウェールズ地方における1974-2008年の成人のがんリスクを、高圧架空電力線から600 mでのモデル化したイオン濃度(cm^3あたり)(口腔、肺、呼吸器系のがんに集中して分析)、ならびに25 mでの電界計算値(悪性黒色腫以外の皮膚がんに集中して分析)との関連で調べた。その結果、空気イオン濃度が5段階中の最高位(0.504-1)の群を、最低位(0-0.01879)の群と比較したところ、年齢、性別、貧困および過疎について調整したオッズ比(OR)は、口腔がんについて0.94(95%信頼区間(CI)= 0.82-1.08)から、呼吸器系のがんについて1.03(95% CI = 0.97-1.09)の範囲で、リスクに傾向は認められなかった。代替モデルから推定したコロナイオン[訳注:送電線等からの発光(コロナ)を伴う放電により電離(イオン化)した大気構成分子]を用いたがんリスクのパターンも同様であった。ケラチノサイト癌腫については、電界強度が3段階中の最高位(1.06-4.11 kV/m)の群を、最低位(<0.70 kV/m)の群と比較したところ、調整後のORは1.23(95% CI = 0.65-2.34)で、リスクに傾向は認められなかった。これらの結果は、電力線の近傍での空気イオン濃度または電界が成人のがんリスクと関連している、という仮説を支持する証拠を提示していない、と著者らは結論付けている。
グループ | 説明 |
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参照集団 1 | air ion density: 0 - 0.1879 per cm 3 |
集団 2 | air ion density: 0.188 - 0.2869 per cm 3 |
集団 3 | air ion density: 0.287 - 0.3849 per cm3 |
集団 4 | air ion density: o.385 - 0.503 per cm3 |
集団 5 | air ion density: 0.504 - 1 per cm3 |
参照集団 6 | electric field strength: < 0.70 kV/m |
集団 7 | electric field strength: 0.70 - 1.05 kV/m |
集団 8 | electric field strength: 1.06 - 4.11 kV/m |
症例 | 対照 | |
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合計 | 57,361 | 47,507 |
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