沖合及び沿岸部での風力発電設備の急激な発展に伴い、水生生物の生息域に超低周波(ELF)電磁界が生じているが、その生物学的影響はほとんど知られていない。この研究は、ELF磁界が軟体動物Onchidium struma[ドロアワモチ属腹足類]に免疫応答を惹起し得るかどうかを、免疫関連酵素活性及び遺伝子発現に基づいて調べた。非ばく露対照群、ばく露群1(50 Hz、100 μT)、ばく露群2(50 Hz、500 μT)の3群を設定し、体腔細胞を採取して分析した。その結果、ばく露群1では対照群及びばく露群2と比較して、体腔細胞及び小球細胞全体の密度が有意に低下した(P < 0.05)。アメーバ様細胞及びクロマトサイトの密度には群間で有意差は認められなかった。ELF磁界はOnchidium strumaの体液中の免疫関連酵素活性(酸性ホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼ、抗酸化能、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、及びポリフェノールオキシダーゼを含む)を有意に上昇させた(P < 0.05)。対照群及びばく露群のOnchidium strumaの体腔細胞からは、それぞれ合計で54.32 Mb及び55.27 Mbの生データ(平均長1520 bp)が得られた。対照群とばく露群では、発現が異なる遺伝子(DGE)が341個あり、そのうち209個は上方制御、132個は下方制御であった。全てのDGEは14個のKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes経路に割り当てられ、そのうち5つの経路(TLR / TNF / NOD様受容体/ MAPK / FcイプシロンRIシグナル伝達経路を含む)は免疫応答に関連していた。まとめると、Onchidium strumaのELF磁界(<500 μT)への短期(1週間)ばく露は免疫応答を惹起し得ることと、免疫影響の指標として抗酸化系が推奨されることを、著者らは報告している。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。