[アトピー性皮膚炎のケラチノサイトにおけるFas/FasL経路及びサイトカイン‐電磁界による操作] med./bio.

Fas/FasL pathway and cytokines in keratinocytes in atopic dermatitis - Manipulation by the electromagnetic field

掲載誌: PLoS One 2018; 13 (10): e0205103

アトピー性皮膚炎(AD)は最も頻発する皮膚疾患の一つである。ADの発症にはケラチノサイトの機能性の変化が重要な役割を担っている。例えば、ADにおける Fas (CD95)/FasL (CD178) 経路の活性化は皮膚での広範囲のアポトーシスにはつながらない。AD改変ケラチノサイトに存在する、Fas受容体とそのタンパク質リガンドFasLとの結合は、細胞死を逐次誘導するはずであるが、これらの細胞には広範囲のアポトーシスの証拠はない。このことは、AD患者では調べられていないが、Fas/FasL経路の非アポトーシス的機序が一般的に生じる現象であることを示唆している。この研究では、ADケラチノサイトの免疫活性を操作する可能性と、これまで調査されてこなかった電磁界に対するその応答を調べた。健康被験者(n = 20)及びAD患者(n = 20)の皮膚から単離したケラチノサイトならびにHaCat及びPCS-200-010細胞を、900 MHz電磁界SAR = 0.024 W/kg)に60分間ばく露した。生存能力のサイトメトリー分析、Fas/FasL、p-ERK、p-p38及びp-JNK発現、ならびにサイトカイン濃度のLuminex分析を、ばく露の4時間後及び24時間後に実施した。その結果、健康被験者と比較して、AD患者の皮膚由来のケラチノサイトによるサイトカイン分泌(IL-1β、IL-4、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-17A、IL-31及びTNFα)の増加に加えて、Fas、FasL、p-ERK、p-p38及びp-JNKの発現上方制御が認められた。AD患者の皮膚由来の培養ケラチノサイトのばく露は、IL-1β、IL-4、IL-10、IL-12、I L-13、IL-17、IL-31及びTNFαのレベルの低下を生じた。炎症部位における局所的なサイトカイン及びケモカイン環境の調節による、Fas/FasL依存性シグナル伝達経路アポトーシス性及び非アポトーシス性の活性化が、ADの病因において重要な役割を担っているかも知れない、と著者らは結論付けている。更に、電磁界はAD改変ケラチノサイトに対して強い免疫調節作用を呈する、と述べている。

ばく露