この研究は、ブタの子宮でのエストラジオール-17β(E2)の合成及び分泌に対する電磁界の影響を調べた。発情周期の12-13日目に子宮内膜及び子宮筋層の切片を採取し、プロゲステロン(P4)あり/なしの条件で電磁界(50及び120 Hz、8 mT)にイン・ビトロで2時間及び4時間ばく露した。その後、保温培地を用いてRIAでE2濃度を判定した。組織片を用いて、CYP19A3 mRNAの発現をリアルタイムPCRで、P450アロマターゼの量をウェスタンブロットで調べた。その結果、50 Hz電磁界はイン・ビトロでのインキュベーションのどちらの時点でも、子宮内膜及び子宮筋層からのE2放出を増加させた。120 Hz電磁界は、2時間のインキュベーション後に子宮内膜でのE2分泌を減少させ、4時間後にはE2分泌に影響しなかった。子宮筋層では、120 Hz電磁界は4時間のインキュベーション後にE2分泌を増加させた。P4で処理した子宮組織片では、電磁界ばく露に関連した有意な変化は認められなかった。P4ありで120 Hz電磁界下で4時間インキュベートした子宮筋層の組織片のみで、電磁界処理による高い量のE2放出が認められた。50 Hzばく露は、P4あり/なしでインキュベートした子宮内膜の組織片でのCYP19A3 mRNA発現を変化させなかった。子宮筋層の組織片では、50 Hz電磁界非ばく露・P4処理した組織片で、50 Hzばく露・P4あり/なしでインキュベート、及び対照群(50 Hz非ばく露、P4非処理)と比較して、最も高いCYP19A3 mRNA発現が認められた。120 Hz電磁界は基底の子宮内膜でのCYP19A3 mRNA発現を減少させ、P4処理した子宮内膜では変化させなかった。子宮筋層では、120 Hz電磁界はP4なしでインキュベートした組織片でCYP19A3 mRNA発現を増加させ、P4ありの場合は影響しなかった。電磁界ばく露(50及び120 Hz)は子宮内膜及び子宮筋層のどちらでも、P450アロマターゼの量に影響しなかった。これらの結果は、発情周期の中期‐黄体期における子宮組織の適切な活動にとって重要な、エストロゲンの子宮内環境の変化につながるかも知れない、と著者らは結論付けている。