この研究は、環境電磁界(EMF)のモニタリングを行った小学校の中から2校(A校、B校)を選び、437人の子供(9-13歳)の神経行動学的機能を横断調査した。高圧送電線(HVT)からのEMFばく露は、両校ともガイドラインの参考レベルをはるかに下回っているものの、例えば電界強度の中央値はA校では0.417 V/m、一方、500kV HVTに近いB校では1.34 V/mのように、両校の測定値には有意差が認められた。神経行動学的機能はコンピュータ化した4種類の神経行動学的テストにより評価した。データ分析は、交絡因子を調整した多変量回帰分析によった。その結果、500kV HVTに近いB校に通学する子供の方が、そうでないA校に通学する子供に比べ、視覚的記憶テストおよび連続点書きテストの成績が低かった;実施した4種類のテストのうち、有意差が見られたのはこの2種類のみであった、と報告している。
学校の周囲の良好な大気の質、騒音及び緑地に関して類似した、広州の郊外にある2つの小学校を選択した。学校Aの4㎞以内には電力線はなかったが、学校Bは500kV電力線から94mの距離に位置していた。両方の学校の周囲には、TVタワーや携帯電話基地局等のその他の電磁界発生源はなかった。
視覚保持検査(視覚認知及び視覚記憶)、視覚単純反応時間、ディジットシンボル、目標追跡検査を含む、確立された4つのコンピュータ化神経行動学検査を用いて、子どもの神経行動学的機能を評価した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 学校Aの児童 |
集団 2 | 学校Bの児童 |
タイプ | 値 |
---|---|
合計 | 437 |
評価可能 | 427 |
全ての測定値は、中国における公衆の電界(4000V/m)及び磁界(0.4µT)に対する参考限度よりも低かった。学校A及び学校Bでの電界強度の中央値は、それぞれ0.417V/m(0.016-2.919V/m)及び1.34V/m(0.522-3.93V/m)であった。学校A及び学校Bでの磁束密度の中央値は、それぞれ0.028µT及び0.20µTであった。2つの学校間の電界強度及び磁束密度の差は統計的に有意であった。
潜在的交絡因子についての調整後の結果は、500kV電力線の近くに学校に通う子どもは、電力線の近くではない学校に通う子どもと比較して、4つのコンピュータ化神経行動学的検査のうち2つ(視覚保持検査及び目標追跡検査)の成績が統計的に有意に低いことを示した。
著者らは、電力線からの電磁界への長期の低レベルばく露は子どもの神経行動学的機能に負のインパクトを与えるかも知れない、と結論付けた。但し、4つの検査のうちの2つの結果しか統計的有意性に到達せず、この研究には潜在的な限界があるので、更なる研究が必要である。
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