この研究は、ヒトの椎間板(IVD)細胞の増殖に電磁界(EMF)が影響を与えるか否かを調べた。ヒトIVD細胞をアルギン酸ビーズで3次元的に培養し、ばく露用と対照用に分けた。EMFは1.8 mT、60 Hzの正弦波であった。ばく露後に、細胞毒性、DNA合成およびプロテオグリカン合成を、MTTアッセイ、[3H]-チミジン取り込み、および[35S]-硫酸塩取り込みによって測定した。表現型の発現を検出するために、アグリカン、I型コラーゲン、およびII型のmRNA発現について逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施した。また、EMFの作用機序を調べる目的で、N(G)-モノメチル-L-アルギニン(NMMA)およびアセチルサリチル酸(ASA)とEMFの組み合わせばく露も実施した。その結果、MTTアッセイにおいて、EMFばく露群で細胞毒性は見られなかったが、細胞増殖の有意な上昇は観察された;DNA合成で正規化された新規合成プロテオグリカン量には、ばく露群と対照群で差がなかった;ばく露群の培養物は、対照群のものと比較して、アグリカン、I型およびII型コラーゲンのmRNAの発現に有意な変化を示さなかった;NMMA(一酸化窒素の遮断薬)またはASA(プロスタグランジンE2の遮断薬)とEMFの組み合わせばく露群では、NMMAまたはASAを含まない対照培養物と比較して、DNA合成の有意な低下が見られた;総括すると、EMFはヒトIVD細胞のDNA合成を刺激するが、プロテオグリカン合成および軟骨形成表現型の発現には有意な影響を与えないこと、DNA合成は、一酸化窒素とプロスタグランジンE2によって部分的に媒介されることが示された、と報告している。
患者8人からヒト椎間板組織標本を得た。
細胞増殖に対する電磁界の作用機序を解明するため、細胞培地を対照群及びN-モノメチル-L-アルギニン(一酸化窒素の抑制剤)またはアセチルサリチル酸(プロスタグランジンE2の抑制剤)あり/なしのばく露群に分けた。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
30–60 Hz
ばく露時間:
continuous for 72 h
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Cells were treated with N(G)-Monomethyl-L-arginine or Acetylsalicylic Acid before exposure to EMF
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 30 cm high solenoid with a diameter of 12 cm, consisting of a polyethylene cylinder tube wound with copper; cells placed in three-dimensional alginate beads in the center of the solenoid |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1.8 mT | - | 測定値 | - | - |
MTTアッセイでは、ばく露群の椎間板細胞における細胞毒性はないことが明らかになった。このことは、細胞毒性のない細胞増殖を意味している。ばく露した細胞培地では対照培地と比較して、³H-チミジン取り込みで測定した細胞増殖が有意に増加した(53%)。
ばく露細胞と対照細胞で、新たに合成されたプロテオグリカンに差はなかった。電磁界ばく露した細胞培地では対照細胞と比較して、アグリカンならびにI型及びII型コラーゲンの発現に有意な変化は見られなかった。
N-モノメチル-L-アルギニンまたはアセチルサリチル酸で処理したばく露細胞では、抑制剤で処理しない対照培地と比較して、DNA合成の減少が示された。
著者らは、電磁界ばく露はヒト椎間板細胞でのDNA合成を刺激したが、プロテオグリカン合成及び軟骨形成の遺伝子型の発現への有意な影響はないことが示された。DNA合成には部分的に一酸化窒素及びプロスタグランジンE2が介在していた。電磁界は椎間板細胞の細胞増殖の刺激に利用でき、これは椎間板変性疾患に対する細胞治療において効果的な細胞増殖を提示するかも知れない。
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