研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[細胞の性質に対する高電圧送電線放射電磁界の影響] med./bio.

The influence of electromagnetic field irradiated by high-voltage transmission lines on properties of cells

掲載誌: 2005 IEEE Engineering in Medicine and Biology 27th Annual Conference, Shanghai. IEEE, 2005: pp. 2997-3000; ISBN 978-0-7803-8741-6

この研究は、超高圧送電線から発生する低周波電磁界ばく露を受けたラットから摘出された脾臓細胞を分析し、細胞の信号伝達への影響を調べた。32匹のラットばく露群と対照群に分けた。ばく露群のラットは、電界強度4000 V/m、磁束密度0.09-0.1 Gの50 Hz電磁界ばく露を約400日連続で受けた。ばく露終了後に摘出された脾臓細胞の信号伝達への影響を分子生物学的手法で評価した。脾臓細胞の一部はIL-2による刺激処置された。IL-2刺激脾臓細胞および非刺激脾臓細胞それぞれにおいて、JAK-STATシグナル伝達経路におけるシグナルトランスデューサおよび転写活性化因子(STAT3)のリン酸化の量またはレベルをイムノブロッティングおよび免疫生化学によって測定した。その結果、IL-2によって刺激された脾臓細胞におけるホスホ-STAT3の発現は、非刺激細胞におけるそれと差のないことが示された;対照群およびばく露群の細胞の信号伝達に関与する一般的なGタンパク質赤外線吸収スペクトルにおけるピーク強度および周波数はどちらも明らかに異なった;これは、タンパク質分子構造またはコンフォメーションが高圧送電線電磁界の影響下で変化したことを示す、と報告している。

研究目的(著者による)

ラット脾臓細胞におけるシグナル変換に対する高圧線から発せられる電磁界の影響力を調べること。

詳細情報

ラット32匹を実験群及び対照群に分けた。ばく露したラット脾臓細胞の一部をIL-2で刺激した(ばく露後;IL-2はJAK-STATシグナル変換経路を活性化させ得る)。

JAK/STATシグナル変換経路遺伝子発現及び細胞活性化の制御に重要な役割を担っている。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 400 days

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 400 days
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • electromagnetic field of high-voltage lines generated by an appliance
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 9 µT unspecified 測定値 - to 10 µT
電界強度 4 kV/m unspecified 測定値 - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
研究対象とした臓器系:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

データは、IL-2及び電磁界刺激した脾臓細胞では、リン酸化STAT3の発現が顕著に上方制御され、またIL-2のみで刺激した脾臓細胞対照群)では、リン酸化STAT3の発現は僅かに上方制御されたことを示した。この知見は、高圧線の電磁界は、IL-2によって刺激されるSTAT3のリン酸化を加速し、またJAK-STATシグナル変換経路も活性化することを示している。

研究の種別:

研究助成

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