研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[ドイツにおける小児急性白血病と居住環境の16.7Hz磁界] epidem.

Childhood acute leukaemia and residential 16.7 Hz magnetic fields in Germany

掲載誌: Br J Cancer 2001; 84 (5): 697-699

この研究は、ドイツでの疫学調査で、住宅での16.7 Hz(鉄道周波数)磁界MF)へのばく露小児白血病の間に中程度で、統計的に有意でない関連を観察したことを報告している。この観察について、ばく露症例は少数であること、住宅での16.7 Hzばく露に関する最初の研究であること、結論として、小児がん研究で16.7 HzのMFを無視しても、所見にはほとんど影響がないように思われることは安心できる、などを考察している。なお、冒頭のドイツでの疫学調査とは、著者グループが実施した電力周波磁界小児白血病に関する症例対照研究(Int J Cancer 2001; 91 (5): 728-735)である。彼らの調査では、小児診断前に最も長く過ごした住宅の小児の寝室で24時間磁界測定を実施した。この調査の一部として、16.7 Hzに関して、今回、分析を行なったという経緯である。

研究の目的(著者による)

ドイツにおける人口ベース症例対照研究で、小児白血病と鉄道から生じる16.7Hz磁界との関連を調査した。50Hz磁界についての結果は、publication 6207 に掲載している。

詳細情報

診断日の前の最も長い期間に住んでいた住居における子どもの寝室で、磁界へのばく露を24時間にわたって測定した。50Hz及び16.7Hzの磁界ばく露を組合せるため、磁界強度をそれぞれに対応する参考レベル(ドイツのガイドラインでは、50Hzでは100µT、16.7Hzでは300µT)で除し、それぞれの割合を加算した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 24時間測定の中央値、16.7Hz:< 0.1 µT
集団 2 24時間測定の中央値、16.7Hz:0.1 - < 0.2 µT
集団 3 24時間測定の中央値、16.7Hz:≥ 0.2 µT
参照集団 4 夜間の磁界、16.7Hz:< 0.1 µT
集団 5 夜間の磁界、16.7Hz:0.1 - < 0.2 µT
集団 6 夜間の磁界、16.7Hz:≥ 0.2 µT
参照集団 7 ピーク磁界、16.7Hz:< 0.1 µT
集団 8 ピーク磁界、16.7Hz:0.1 < 0.2 µT
集団 9 ピーク磁界、16.7Hz:≥ 0.2 µT
参照集団 10 磁界の中央値、16.7Hzと50Hzの組合せ:ドイツのガイドラインの限度値の < 1/1000
集団 11 磁界の中央値、16.7Hzと50Hzの組合せ:ドイツのガイドラインの限度値の1/1000から< 1/500
集団 12 磁界の中央値、16.7Hzと50Hzの組合せ:ドイツのガイドラインの限度値の≥ 1/500
参照集団 13 夜間の磁界、16.7Hzと50Hzの組合せ:ドイツのガイドラインの限度値の < 1/1000
集団 14 夜間の磁界、16.7Hzと50Hzの組合せ:ドイツのガイドラインの限度値の1/1000から< 1/500
集団 15 夜間の磁界、16.7Hzと50Hzの組合せ:ドイツのガイドラインの限度値の≥ 1/500

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 847 2,127
参加率 58 % 58 %
評価可能 489 1,240
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

居住環境での16.7Hz磁界が0.2µT以上であることは非常に稀(対照の僅か0.5%)であった。
居住環境での16.7Hz磁界ばく露小児白血病との中程度だが統計的に有意でない関連が認められた。本研究は、超低周波磁界についての小児白血病研究において、鉄道によって生じる16.7Hz磁界を無視しても、全体的なアウトカムへの影響はほとんどなさそうである、ということを再確認している。

研究の限界(著者による)

この結果はばく露された子どもの少ない数に基づいている。

研究助成

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