この研究は、マイクロ波照射によって誘発される心臓障害に対する、アストラガロシド(AST、生薬の一種)の保護効果とそのメカニズムを調べた。ラットおよびH9c2細胞を用い、Sバンドマイクロ波を照射してイン・ビボおよびイン・ビトロの心臓損傷モデルを作製した。照射されたラットに対しては、AST投与後7日および/または14日後に、電気生理学的検査、血清生化学分析、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色、透過型電子顕微鏡(TEM)、ウェスタンブロット、および免疫組織化学染色を実施した。一方、1-Azakenpaullone(グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3β阻害剤)またはASTで前処理した照射H9c2細胞に対しては、TEM、細胞数測定キット-8アッセイ、ウェスタンブロット、テトラメチルローダミンメチルエステル染色、ならびに活性酸素種(ROS)、アデノシン三リン酸(ATP)、およびミトコンドリア膜電位(MMP)の測定を行った。イン・ビボ実験の結果は、マイクロ波照射が重度の心臓損傷(異常な心電図および心臓組織構造、血清心筋酵素活性およびCa2+濃度の増加によって示される)およびグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3β(p-GSK-3βSer9)のリン酸化レベルの低下を誘発することを示した。これらの変化は全て、AST処理後に回復した。イン・ビトロ実験の結果は、マイクロ波照射がH9c2細胞においてp-GSK-3βSer9のレベル低下、ミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)の開口増加、およびより深刻なミトコンドリア機能不全(細胞内ROS産生の増加、細胞内ATP合成の減少、およびMMPの低下によって特徴付けられる)を誘発することを示した。これらの変化は全て、1-AzakenpaulloneおよびASTの前処理によって回復した。これらの知見は、ASTがGSK-3βSer9のリン酸化を促進し、それによってmPTPの開口を阻害し、ミトコンドリア機能を回復させることにより、マイクロ波照射によって誘発される心臓損傷から保護できる可能性を示唆するものである、と著者らは報告している。
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