ミトコンドリアは心臓の中心的なエネルギー生成装置であり、酸化的リン酸化(OXPHOS)系を介してアデノシン三リン酸(ATP)を産生する。ミトコンドリアは重要な細胞の意思決定や環境ストレス因子への応答も導く。この研究は、長期にわたる電磁ストレスがミトコンドリアのOXPHOS系および心筋組織の構造的変化に影響を及ぼすかどうかを調べた。長期の電磁ストレスを誘発するため、マウスを28日間、915 MHz電磁界にばく露した。その結果、ばく露群のミトコンドリアのOXPHOS能力の分析では、心筋の複合体I、II、IIIおよびIVのサブユニットのタンパク質発現に有意な増加が認められたが、ATP合成酵素(複合体V)のαサブユニットの発現レベルは群間で安定していた。更に、単離した心臓ミトコンドリアの呼吸機能の測定では、長期の電磁ストレスがミトコンドリアの呼吸能力を変化させることが示された。但し、酸化ストレスの指標であるマロンジアルデヒドの血漿レベル、および、ミトコンドリア内在性抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ2の心筋発現については、ばく露群と対照群に差は認められなかった。左心室の構造および機能状態については、ばく露群の心臓に異常は認められなかった。これらのデータは、電磁界への長期的なばく露が心臓のOXPHOS系を調節することでミトコンドリアの酸化代謝に影響を与える可能性があることを示唆している、と著者らは結論付けている。
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