電磁界は生体組織と相互作用して、細胞の生存率に対する正および負の影響を生じ得るが、その根底にあるセンシングおよびシグナル伝達のメカニズムはほとんど知られていない。これまでのところ、興奮性細胞での電磁界ばく露は電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)を介したカルシウムイオン(Ca2+)流入と、それに連なる細胞の活性化および抗酸化応答を生じ、更にはDNA損傷または細胞死に至る、と仮定されている。この論文は、赤血球のような非興奮性細胞でも、外側ミクロソーム膜だけでなく細胞膜にある電位依存性陰イオンチャネル(VDAC)が、印加される電磁界の僅かな変化を各種容量のCa2+伝導チャネルに変換するということについて、文献からの証拠を取りまとめている。VDACは複数のエンドポイントと関連付けられていて、中でも18 kDaトランスロケーター(TSPO)がニューロンの中枢ベンゾジアゼピン受容体として特徴付けられて以来、特に関心を集めている。TSPOは磁気受容体との構造的類似性を示すことから、この著者らは、TSPOが電磁界の磁気成分を感知でき、VDACと共に生理学的ならびに病理学的な細胞応答のトリガとなり得る、という仮説を提唱している。電磁過敏症の人々の精神障害は、脳波通信ネットワークの周波数範囲のパルス化電磁界によって説明できるかもしれない。不眠症、不安神経症、うつ病などの障害は、ジアゾピンで治療可能であるという心理学からの重要な支持が示されており、これはTSPO/VDAC複合体と電磁界への生物反応との見かけ上のつながりを示している、と著者らは論じている。
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